序章
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持っていた物全てを詰め込んだはずの鞄は半分以上隙間が出来てしまっている。
そんな軽い鞄を手にミソラは緊張した面持ちで立っていた。目の前にある呼び鈴に伸ばした指先は震えており、鞄を握る手に力がこもる。
ゆっくりと深呼吸をして呼び鈴を押す。
家の中から明朗な声が聞こえてくる。
その声にビクリと肩を振るわせたミソラは自分を励ますかのように日本語で呟く。
「大丈夫、手紙は持っているんだから」
上着のポケットに入っている手紙をそっと服の上から押さえつける。
古びたソレがどれほどの効果を持つのか解らない。
だが、今だけはそれにすがるしか無いのだ。
両親が残してくれただろう最後のプレゼントなのだから。
最後に手に入れることの出来た幸運となるのか、または最初からあった不幸となるのかは解らない。
「どちらさま?」
「あ、あの・・・私、ミソラ・アマネと申します」
「ミソラ・アマネ?」
「えっと、その、突然で申し訳ないのですが、コレを読んでは頂けませんか?」
緊張故か所々言葉に詰まりつつもミソラはつたない英語で女性に向かいそう告げると、鞄を地面に置き上着のポケットに大切に入れていた手紙を取り出す。
古ぼけたソレを女性は胡乱げな眼差しで見つめていたが、遠慮がちにその手紙を手に取ると封筒の中にある手紙を取り出す。
無言のまま手紙に目を通していた女性であったが、文章を読み進めると信じられないと言うかのように大きく目を開く。
「ロン!!ちょっと、ロン!!あなた、早く来てちょうだい!!!」
家のある方に向かい女性は誰かの名を呼ぶ。
間延びした声で返事が聞こえた後、顔を泥だらけにした男がゆっくりと現れる。
男と目が合ったミソラは深々と頭を下げる。
「コレを読んでちょうだい、私には判断が出来ないわ」
困ったことになった、と言わんばかりの女性の言葉にミソラの顔は引きつる。
もっとも深く頭を下げている状態のため彼らにはその顔は見えない。
ロンと呼ばれた男性は女の手から手紙を受け取ると、しばしの間ずっと黙ったままであった。
「あー・・・すまんがちょっと良いかね?少しばかり、そう、少しばかり家族会議をしなければいけなくなった」
「はい。あの、私・・・あっちの方で待ってます。公園があったので」
地面に下ろしていた鞄を手に取ったミソラは夫妻に向かい再度頭を下げると逃げるようにその場から歩き出す。
彼らの困惑具合は明らかだった。
「きっと迷惑だったよね」
ため息をひとつ吐いたミソラは重たい足取りで先程見つけた公園へと向かって歩き出す。
公園はたくさんの親子であふれかえっており、一人で公園に居るミソラの姿は明らかに浮いており、じろじろと向けられる視線に耐えきれなかったミソラは、視線を足下に落としながら公園の隅にある小さなベンチへと腰掛けた。
「アメリカまで来たのに」
結局無駄になってしまったと思いながらミソラは鞄を見つめる。
正確には鞄の中にあるだろう財布だ。なけなしの財産はここに来るまでの間にほぼ無くなってしまっている。彼らに断られた際、仕方が無いので帰りの旅費だけでもなんとかしてもらおうと思いながら時間を潰す。
どれくらいそうしていたのか解らない。
ただ、明るかったあたりは薄暗くなり始め、たくさんの声で溢れていた公園はいつの間にか静寂が満ちている。
「そもそも都合良く追い返されただけかもしれないなぁ」
いつだって自分は貧乏くじばかり引いているなと思い苦笑を浮かべた時だった。
「見つけた!!」
元気の良い声に弾かれるようにミソラはその方向を見た。
そんな軽い鞄を手にミソラは緊張した面持ちで立っていた。目の前にある呼び鈴に伸ばした指先は震えており、鞄を握る手に力がこもる。
ゆっくりと深呼吸をして呼び鈴を押す。
家の中から明朗な声が聞こえてくる。
その声にビクリと肩を振るわせたミソラは自分を励ますかのように日本語で呟く。
「大丈夫、手紙は持っているんだから」
上着のポケットに入っている手紙をそっと服の上から押さえつける。
古びたソレがどれほどの効果を持つのか解らない。
だが、今だけはそれにすがるしか無いのだ。
両親が残してくれただろう最後のプレゼントなのだから。
最後に手に入れることの出来た幸運となるのか、または最初からあった不幸となるのかは解らない。
「どちらさま?」
「あ、あの・・・私、ミソラ・アマネと申します」
「ミソラ・アマネ?」
「えっと、その、突然で申し訳ないのですが、コレを読んでは頂けませんか?」
緊張故か所々言葉に詰まりつつもミソラはつたない英語で女性に向かいそう告げると、鞄を地面に置き上着のポケットに大切に入れていた手紙を取り出す。
古ぼけたソレを女性は胡乱げな眼差しで見つめていたが、遠慮がちにその手紙を手に取ると封筒の中にある手紙を取り出す。
無言のまま手紙に目を通していた女性であったが、文章を読み進めると信じられないと言うかのように大きく目を開く。
「ロン!!ちょっと、ロン!!あなた、早く来てちょうだい!!!」
家のある方に向かい女性は誰かの名を呼ぶ。
間延びした声で返事が聞こえた後、顔を泥だらけにした男がゆっくりと現れる。
男と目が合ったミソラは深々と頭を下げる。
「コレを読んでちょうだい、私には判断が出来ないわ」
困ったことになった、と言わんばかりの女性の言葉にミソラの顔は引きつる。
もっとも深く頭を下げている状態のため彼らにはその顔は見えない。
ロンと呼ばれた男性は女の手から手紙を受け取ると、しばしの間ずっと黙ったままであった。
「あー・・・すまんがちょっと良いかね?少しばかり、そう、少しばかり家族会議をしなければいけなくなった」
「はい。あの、私・・・あっちの方で待ってます。公園があったので」
地面に下ろしていた鞄を手に取ったミソラは夫妻に向かい再度頭を下げると逃げるようにその場から歩き出す。
彼らの困惑具合は明らかだった。
「きっと迷惑だったよね」
ため息をひとつ吐いたミソラは重たい足取りで先程見つけた公園へと向かって歩き出す。
公園はたくさんの親子であふれかえっており、一人で公園に居るミソラの姿は明らかに浮いており、じろじろと向けられる視線に耐えきれなかったミソラは、視線を足下に落としながら公園の隅にある小さなベンチへと腰掛けた。
「アメリカまで来たのに」
結局無駄になってしまったと思いながらミソラは鞄を見つめる。
正確には鞄の中にあるだろう財布だ。なけなしの財産はここに来るまでの間にほぼ無くなってしまっている。彼らに断られた際、仕方が無いので帰りの旅費だけでもなんとかしてもらおうと思いながら時間を潰す。
どれくらいそうしていたのか解らない。
ただ、明るかったあたりは薄暗くなり始め、たくさんの声で溢れていた公園はいつの間にか静寂が満ちている。
「そもそも都合良く追い返されただけかもしれないなぁ」
いつだって自分は貧乏くじばかり引いているなと思い苦笑を浮かべた時だった。
「見つけた!!」
元気の良い声に弾かれるようにミソラはその方向を見た。