助け出されたミソラはある夫婦の元に引き取られた。
　彼らが与えてくれる無償の愛はとても温かく、人としての尊厳を奪われ続けていたミソラにとってかけがえのないものだった。
　
　「長い間眠っていたことと、実験の影響で私は当時の記憶を失い、普通の女の子として私は生きていた。でも・・・ある日、彼らと一緒に行動を共にしていた時に事故に遭って」

そこで口は止まる。
　思い出すのは必至に逃げろと叫ぶ彼らの姿。
　嫌だと言って、助け出そうと金属の塊をどかそうとするのに、人の力でそれはどうにもならない。

　「私の目の前で彼らは死にました」

嫌だと、夢であって欲しいと願った。
　初めてこれが夢なら良いのにと思った。
　
　「きっとそれは惨めにも生きながらえた私に与えられた罰なんでしょうね」

　『ミソラ、それは違う。生きることが罰になることは無い・・・・生きることは誰にでも等しく与えられることなのだから』

　「オプティマスは本当に優しいね」

もっと早くに彼とで会っていたのならば。最初に彼と出会えていたのならば、そう考えたミソラは無い物ねだりだと思う。
　でも、どこかで願ってしまう。
　彼と出会えていたのならば。きっと、彼は自分達を傷つけなかった。きっと対話をしてくれたはずだと。

　「・・・あの人達は、一時でも私が両親だと思った人達は自分達に何かあったときに私が路頭に迷わないようにしてくれていたの。そして、私はウィトウィッキー家に向かい、彼らと暮らすようになった」

後のことはもう言わなくても解るだろう。
　口を閉ざしたミソラはハンドルを見つめる。

　『すまなかった』

何故、謝るのだろう。どうして彼の声はこんなにも苦しそうなのだろう。
　そう思いながらミソラはぼんやりとハンドルを見つめていた。
　彼が謝ることは何一つとしてない。
　そう言おうとしたミソラよりも早く、オプティマスが声を出す。

　『辛いことを聞いた』

　「・・・大丈夫だよ」

　『ミソラ、君に一つ頼みがある』

改まって言われた言葉にミソラは何だろうかと考える。
　無意識の内に背筋を伸ばしたとき、オプティマスはゆっくりと車を止めた。どこかの建物の前であることに気づいたミソラがその建物を窓越しに見つめていると、閉じられていたシャッターがゆっくりと開いていく。
　中にある光景にミソラはいつの間にか自分がラチェットの元に着いていたことを理解した。

　『私に君を守らせて欲しい』

　「・・・・え？」

何を言っているのだ？と言いたげな顔をしてミソラはハンドルを見つめることしか出来なかった。