戦いの後始末にミソラ達が加わることは無かった。
　今後の事は全て政府が速やかに、かつ、秘密裏に処理を行うということが決定したのだ。サムをはじめ、今回のこの騒動に加わった者達は秘密厳守するようにと告げられ、書類にサインをして全てが終わった。
　意外にも呆気ない終わり方にサムは少々納得出来ない顔をしていた。

　「ほぅ！？不満か、小僧！！なんならそのイカレタ黄色い車を押収してやろうか！？」

私の退職金代わりとしてな！！
　と、悔しげな顔をしてそう叫んだシモンズの言葉にサムはバンブルビーの前に立ち、何も政府に不満など無いと言葉を返していた。そんなサムに対しバンブルビーは酷く感動したらしく、『”私と貴方は一心同体””私と一緒に死んでちょうだい！！””結婚しましょう？”』等と嬉しそうな声で答えている。
　その時丁度、隣室で書類にサインをしていたミソラが全てを終えて出てくる。

　「ミソラが来たことだし帰ろうか」

　「ごめん、サム・・・私ちょっと行くところがあって。先にバンブルビーと家に帰ってて？」

驚いているサムに向かい困ったように微笑んだ後、ミソラはキュルキュルとうなっているバンブルビーのボンネットにそっと触れる。

　「サムのことよろしくね」

　『”あの人のことは私が守ってみせるわ””この命に代えても”』

　「ありがとう。でも、バンブルビーも自分のことを大切にしてね」

発声システムが破壊されているからと言われていたバンブルビーであったが、そのシステムはとうの昔に治っていたのだ。
　だが彼はあえてラジオを通しての会話をする。
　サムが何度か普通に話せと言っているがバンブルビーはその言葉を無視しているのだ。彼はどうやらこのやり方を気に入っているらしく、普通に話す気が無いのだと理解したサムはバンブルビーの主張を尊重した。

　『”忘れないで””私たちは貴方の敵じゃ無い””だって貴方はかけがえのない存在だもの””愛しい私の宝物”』

　「・・・うん、ありがとう」

再度、ボンネットを撫で終えたミソラはバンブルビーから離れ、約束している場所に向かい歩きだす。
　少し離れたところで自分を待っていたのは赤と青のペイントがされたトラックだ。

　「こんにちは、オプティマス」

挨拶に対して排気を一つ、オプティマスは返してくると何も言わずに扉を開く。
　無人の室内に対して恐怖も疑問も抱かずにミソラは乗り込む。
　シートベルをすると運転手の居ないトラックが走り出す。

　『目的地に行く前に少し寄り道をしていきたい』

　「私は大丈夫ですけど」

約束をしている彼は了承しているのだろうかと考えていると、その考えを見抜いたオプティマスが答える。

　『すでにラチェットには話を通している』

　「だったら問題ないですね」

ここに来る前に話をつけてきているのだろうと理解したミソラは、大人しく座席に座っていた。
　オプティマスの運転は丁寧であまり振動がない。その心地よさから眠気を感じたミソラの瞼が下がり始めた頃、彼は声をかけてくる。

　『君の事を聞かせて欲しい』

何故メガトロンの事を知っていたのか、そして何故彼に敬称をつけたのか。
　オートボットとして知っておかなければならないのだと、オプティマスは告げる。