そこからの出来事は酷く朧気なものでしかない。
　どうやってあの崩壊する場所から無事に逃げたのか全く記憶に無くて、気づいたら地上に居て、オプティマスの中にケイド達と一緒に居たのだ。
　熱い抱擁を交わす２人を極力見ないようにしつつミソラはいつの間に、ケイドとヴィヴィアンはそういった仲になったのだろうか？と考える。
　メガトロンによって攫われた時の事を思い出したミソラは、きっとその時に２人はそういう関係になったのだろうなと思うと少しだけケイドとヴィヴィアンに嫉妬してしまう。
　
　「（我儘を言うのなら私だってオプティマスと２人きりが良かったなぁ）」

久方ぶりに会えた愛しい人のと時間を楽しみたかった。
　
　「（私も思いきってケイドさん達みたいに）」

オプティマスに甘えてみようか？そう思い行動しようと思ったが、羞恥心が先に込み上げてきてしまったため実行することは出来ずに終わる。
　ドクドクと脈打つ心臓が熱くて、顔が火照り始めたミソラに気づいたのはオプティマスだった。
　もしかして傷が悪化して体調が悪いのかと思ったオプティマスが若干焦りながら、こっそりとミソラをスキャンする。
　それに気づいたミソラは自分の考えが読まれたことを悟ると、顔を真っ赤にして両手で覆う。

　『す、すまない』

ミソラが何故そうなったのか解ったオプティマスはスパークが熱くなるのを感じながらも、上擦り震えた声で謝罪の言葉を告げる。
　
　「私の方こそ、ごめん・・・その、久しぶりに会えたから意識しちゃって」

少しばかり落ち着いた心臓を押さえながらミソラははにかむ。
　こんな風に穏やかな時間なんて本当に久しぶりで、そしてこの愛しい時間が限られていることくらい解っていた。
　窓の外に見えるサイバトロン星をミソラはジッと見つめながら、このままでは終わらないのだと感じていた。
　責任感の強いオプティマスはきっとサイバトロン星にいく。
　また離ればなれになってしまうのだろうか？また自分は待っているだけなのだろうか？そう思いながら窓の外の景色を見ていたときだ。

　『ミソラ』

　「なに？」

　『傷は平気か？』

傷という言葉にミソラは自分の状態を確認する。
　オプティマスに斬られた傷、そしてオールスパークの力を使いすぎたが故に負った裂傷、どれも痛々しい傷ではあったが今では塞がっている。
　恐る恐る触れれば、ズキリと刺すような痛みが走ったためまだ完全には癒えていないのだと理解したミソラはため息を吐くと答えた。

　「塞がってはいるけど・・・完全に治ったわけじゃ無いみたい」

　『そうか』

ミソラの返答にオプティマスは何かを考えるかのように沈黙する。
　どうしたのだろうか？と思いながらミソラは勝手に動くハンドルをジッと見つめていたときだ。

　『私はサイバトロン星に向かおうと思っている』

その返答にミソラはやはりそうなのだなと思うとぎこちなく微笑む。
　本当は少しだけ休んで欲しい。
　けれどそれを言ったとしてもきっとオプティマスが受け入れないことも解っていた。
　一刻も早くサイバトロン星の状態を確認したいのだ。
　自分がもしもオプティマスと同じ立場ならばきっと同じ事をしたはずなのだから。

　「そうだよね。センチネルの時、そして今回の件でサイバトロン星にどれほどの被害が出ているのか解らない・・・確認しておきたいよね」

　『ミソラ』

　「解ってるから」

だから、大丈夫。
　そう言うかのようにミソラは笑う。