自分はこのまま死んでも良い。
　それでもどうかサムを助けて欲しい。地球の未来という重たい荷物を背負う事になってしまった彼をどうか。

　「お願い」

結局何も出来なかった。
　涙で濡れる瞳を閉じた瞬間、 ミソラの体は何かに包まれる。
　驚いたミソラが目を開くとそこはいつの間にか暗闇に包まれており、何が起きたのか理解が出来ないミソラは瞬きをする。
　しかし、伝わってくるスパークの波動に気づくと手を胸元に寄せ涙を流す。
　強い振動が体に走った後、ゆっくりと光が差し込んでくる。
　目の前には青い瞳があった。

　『無事だったようだな』

　「オプティマス」

顔をくしゃくしゃにして涙を流しながら自分を助けてくれたオートボットの名を呼ぶ。
　自分を見つめる青い瞳。
　その瞳は先程死んでしまった名も知らないオートボットととてもよく似ていた。

　「ごめん、なさい」

　『何を謝るのだ？君はとても勇敢だ。メガトロンに屈する事をしなかったのだから』

　「違うんです、そうじゃないんです・・・」

オプティマスが急いでいることも解っている。
　メガトロンの手にキューブを渡さないようにするために、サムを守りに行かねばならないのだから。
　彼の気持ちを解った上でミソラは彼を引き留めるかのようにオプティマスの大きな指にしがみつく。

　「私のせいでオプティマスの仲間が」

守ってやると言ってくれた名も知らない銀色の彼。
　短い時間ではあったが彼と交わした会話を思い出しながらミソラは涙を流す。

　『そうか』

いつもと同じような声であったがその声には悲痛さが少しだけある。
　彼にそんな気持ちを、痛みを与えてしまったのは自分だ。直接的な原因では無いがきっかけを作ったのは自分だとミソラは思いながらオプティマスの指を握った。

　『ミソラ、今は時間が惜しい。私はサムの所に行かねばならない。キューブを守らなくては・・・君はここから非難するんだ。この道を東に向かえばバンブルビーとミカエラが居る』

　「はい」

　『君の話は全てが終わってから必ず聞こう』

オプティマスが手を地面に近づけてくれ、ある程度の高さまで来るとミソラはオプティマスの掌から飛び降りる。
　
　『大丈夫だ。この星の未来は私が必ず守ってみせる』

だから安心して欲しい。
　そう言ったオプティマスはメガトロンのスパークがある方向に向かって移動を開始した。
　彼が行くのならば大丈夫だ。
　未だに流れる涙を乱暴に拭ったミソラは、バンブルビーとミカエラが居る場所に向かって歩き出した。