5章:全てはこの為に
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車体を通して伝わってくるエンジンの振動、背後から聞こえてくるサイレンの音、全てが知らず知らずの内に気分を高揚させていた。
久方ぶりの逃走劇、危機感を抱かなければと思いながらサイドミラー越しにこちらを追いかけているパトカーを見つめる。
「(墓場の風とは違う)」
執拗に自分達を殺そうとしてきた相手。
彼等と比べて今、自分達を追いかけてきている相手は一般市民へ被害が及ばないように配慮していることからか追撃の手は優しい。
ミソラにとってはある意味でやりやすい者達だ。
『ビーを逃がすため俺が囮になる。ma chérie・・・構わないか?』
「勿論。ただ、私は運転技術には自信がないからお任せしても?」
『喜んで引き受けよう』
交渉成立、そう言うかのようにホット・ロッドは車体を走らせる。
自らが運転する必要がないと解っているのだが無意識の内にハンドルを握る手に力がこもっており、ミソラはそれに気づくと落ち着けと言うかのように深呼吸をする。
運転はホット・ロッドがしてくれているのだから間違いはない。
自分はただここに座っているだけで良いのだと言い聞かせていると、ラジオから軽快な音声が聞こえてきた。
『ma chérie。お話しよう』
「この状況で?」
『こんな状況だからさ』
「・・・なにを話すの?」
『そうだなぁ。何について話そうか?』
会話をしようと自ら提案してきたもののそれが思いつきでしかなかったらしいホット・ロッドの発言を聞いたミソラは、驚いたように目を見張った時だ。
凄まじい勢いで一台のパトカーが接近してくる。
追突されるのではないかと思えるかのようなパトカーの姿に気づいたミソラが驚きのあまり、息を詰めたのと同時にホット・ロッドはハンドルを動かす。
パトカーは縁石へと乗り上げ、追跡してることが不可能になる。
ホッと胸をなで下ろすミソラとは対照的にホット・ロッドはまさに口笛を吹きそうなほど上機嫌そうな笑い声をラジオから響かせた。
バックミラー越しにパトカーから人が降りたことを確認できたミソラは搭乗者達が無事だった事に良かったと安堵の笑みを浮かべたときだ。
『アレは君の敵だろ?』
「敵だとしても・・・私は死んで欲しくはないんです」
敵であれど命を散らして欲しくはない。
そう言うかのようにミソラはギュッとハンドルを握りしめる。
窓越しに聞こえてくる悲鳴を拒否するかのように目を閉じれば、ホット・ロッドは気を遣ったのか彼らを撒くための行動に移ってくれた。
石畳の上を疾走する音に混じるかのようにホット・ロッドは問いかける。
『彼等が俺達の仲間を殺したとしても死んで欲しくはないの?』
「ッ・・・」
ミソラの脳裏に浮かぶのは次々と殺されていくオートボット達の姿だ。
人間のために協力してくれた彼等。
その彼等を裏切ったのは人間。
「私も人間ですから」
『君と同じだって?俺にはそうは思えないけど?人間達は君を実験体として欲している。君を捕まえて、君を研究して、自分達の為に利用しようとしている・・・それなのに君は彼等と自分を同じだって言うのかい?』
「それは・・・」
『どちらかと言えば君は俺達寄りだろ?』
至極当たり前のことのように言われた言葉にミソラは言葉を返せない。
人間ではない。
そう言われた気がしたからだ。
久方ぶりの逃走劇、危機感を抱かなければと思いながらサイドミラー越しにこちらを追いかけているパトカーを見つめる。
「(墓場の風とは違う)」
執拗に自分達を殺そうとしてきた相手。
彼等と比べて今、自分達を追いかけてきている相手は一般市民へ被害が及ばないように配慮していることからか追撃の手は優しい。
ミソラにとってはある意味でやりやすい者達だ。
『ビーを逃がすため俺が囮になる。ma chérie・・・構わないか?』
「勿論。ただ、私は運転技術には自信がないからお任せしても?」
『喜んで引き受けよう』
交渉成立、そう言うかのようにホット・ロッドは車体を走らせる。
自らが運転する必要がないと解っているのだが無意識の内にハンドルを握る手に力がこもっており、ミソラはそれに気づくと落ち着けと言うかのように深呼吸をする。
運転はホット・ロッドがしてくれているのだから間違いはない。
自分はただここに座っているだけで良いのだと言い聞かせていると、ラジオから軽快な音声が聞こえてきた。
『ma chérie。お話しよう』
「この状況で?」
『こんな状況だからさ』
「・・・なにを話すの?」
『そうだなぁ。何について話そうか?』
会話をしようと自ら提案してきたもののそれが思いつきでしかなかったらしいホット・ロッドの発言を聞いたミソラは、驚いたように目を見張った時だ。
凄まじい勢いで一台のパトカーが接近してくる。
追突されるのではないかと思えるかのようなパトカーの姿に気づいたミソラが驚きのあまり、息を詰めたのと同時にホット・ロッドはハンドルを動かす。
パトカーは縁石へと乗り上げ、追跡してることが不可能になる。
ホッと胸をなで下ろすミソラとは対照的にホット・ロッドはまさに口笛を吹きそうなほど上機嫌そうな笑い声をラジオから響かせた。
バックミラー越しにパトカーから人が降りたことを確認できたミソラは搭乗者達が無事だった事に良かったと安堵の笑みを浮かべたときだ。
『アレは君の敵だろ?』
「敵だとしても・・・私は死んで欲しくはないんです」
敵であれど命を散らして欲しくはない。
そう言うかのようにミソラはギュッとハンドルを握りしめる。
窓越しに聞こえてくる悲鳴を拒否するかのように目を閉じれば、ホット・ロッドは気を遣ったのか彼らを撒くための行動に移ってくれた。
石畳の上を疾走する音に混じるかのようにホット・ロッドは問いかける。
『彼等が俺達の仲間を殺したとしても死んで欲しくはないの?』
「ッ・・・」
ミソラの脳裏に浮かぶのは次々と殺されていくオートボット達の姿だ。
人間のために協力してくれた彼等。
その彼等を裏切ったのは人間。
「私も人間ですから」
『君と同じだって?俺にはそうは思えないけど?人間達は君を実験体として欲している。君を捕まえて、君を研究して、自分達の為に利用しようとしている・・・それなのに君は彼等と自分を同じだって言うのかい?』
「それは・・・」
『どちらかと言えば君は俺達寄りだろ?』
至極当たり前のことのように言われた言葉にミソラは言葉を返せない。
人間ではない。
そう言われた気がしたからだ。