既に見慣れた廃材と廃車を見たミソラは帰ってきたのだという気持ちになる。乾いた大地、舞い上がる砂塵に最初こそ慣れなかったが、人とは恐ろしいもので一週間も経てばソレが当たり前だと思うようになった。

　「ここに棲んでるの？」

　「まぁ見た目はアレだけど住めば都だから」

少しばかり引いているイザベラの言葉にミソラは苦笑交じりに答える。
　凄く良い場所とは言えないが、腰を据えられて、足を伸ばして眠れる環境にいられるだけまだ良い方なのだとミソラは知っている。

　「（オプティマスとの逃避行が嫌だったわけじゃ無いけど）」

辛い事も苦しい事もたくさんあったが、それ以上に沢山のことを教えられた旅だった。
　オプティマスとの語らい。
　サイバトロン星の話、仲間達と旅をしていた時の話、今となっては懐かしい思い出話をミソラは忘れたことは無い。
　
　「（どうか無事でいて）」

そっと心臓の辺りに手を置いたミソラは微かに繋がっているモノの存在を確認する。
　途切れてはいない、千切れてはいない、だからまだ大丈夫。
　そう不安で満たされていく心へと向かい話しかけた時だ。
　
　「ミソラ！悪い、俺はグリムロックに話をつけてくる」

　「解りました。私は食事の準備してますね」

怒り心頭だというケイドは荒々しい足取りで去って行く。
　その背に向かいミソラが慌てて言葉を返せば彼は解ったと言うかのように大きく手を振る。

　「グリムロック？ペットでも飼ってるの？」

　「んー・・・アレをペットと呼んでい良いのか解らないけどね。ちょっと事情があって一緒に此処で暮らしているの」

恐竜はペットの部類に入るのだろうか？そう考えながらミソラはイザベラの疑問に答えると、ケイドが進んでいった方向へと視線を向けた。
　イザベラもつられるかのようにその場所を見た瞬間、彼女は絶句した。
　廃車の中を堂々と歩き回っているのが金属で出来た巨大な恐竜だったからだ。
　何かを食べているのが大きな口がもごもごと動いており、口を動かす度に金属の破片がボロボロと地面に落ちていく。

　「グリムロック！！！お前またパトカーを食べたなッ！？さっさと吐き出せ！！！」

強面の恐竜に臆することなくケイドが命令を下せば、グリムロックは口の中から一台のパトカーを吐き出す。
　緑色の液体まみれになったソレが二度と動かないことは一目見て明らかだった。
　既に何台目になるのか解らないパトカーをミソラは何とも言えない目をして見つめていると、後方から言い争う声と共にガシャン、ガシャンという金属の衝突する音が聞こえたため振り返る。

　「またやってる」

呆れた声と顔でミソラが呟いた言葉をめざとく聞き届けた、どちらかと言えば喧嘩する二体の音を聞いたケイドがこめかみを引きつらせながら、今なお廃車を破壊しながら喧嘩をする二体へと向かい怒声を上げた。

　「ビー！クロスヘアーズ！お前達いい歳してガキみたいな喧嘩をするな！！」

あっちが終わったかと思えば、こっちが問題を起こす。
　そんな状況に対しケイドは口うるさく注意をしており、ソレを見たイザベラが楽しそうに声を上げて笑う。

　「ケイドはまるでみんなのお父さんみたいね」

イザベラの言葉にミソラはあぁ本当だ。と思いながらしっかりと頷いた。