耳を塞ぎたくなる爆音、吹き飛ばれそうな爆風があたりを支配する。
　あたりには怪我を負った人の悲鳴、指示を出す軍人の声、逃げ惑う人々の姿があり、誰もが今起きている事への対処が一歩遅れた形となっていた。
　それは奇襲を仕掛けてきたディセプティコンが数体おり、その中の一機が戦闘機に変形していたからだ。
　味方であるはずの戦闘機からの攻撃に対し、人々は対処が遅れてしまった。
　なによりディセプティコンの強靱な外装と強力な武器に対し、人類が今持っている武器はあまり役には立っていない。
　人類の持つ武器を有効的に使うためには、彼らの急所を直接打ち抜かねばならない。
　彼らもソレを解っているから近づかず遠くからしか攻撃をしてこない。

　「バンブルビー！！」

サムの声にミソラは彼らの方に近づく。
　そしてバンブルビーの身に起きている事に気づくと息をのむ。彼の足は膝から下の部分が損傷しているのだ。
　これではもう自由に動き回れない。
　
　「大丈夫だ、バンブルビー・・・僕はどこにも行かない。一緒に居るよ」

ここまで来た仲間であるバンブルビーを、自分を守ってくれた愛車を見捨てることはサムには出来ない。
　だが、バンブルビーはサムのその気持ちを解った上で彼をこの場から避難させる為、そそて自身の任務を遂行する為に彼にキューブを差し出した。
　
　「嫌だッ！！僕は君と一緒に、」

　「サム、行って」

拒否をしたサムに対しミカエラが静かな声で話しかける。
　土埃で汚れているのに彼女はとても美しい。凜とした強さを失っては居ない。

　「バンブルビーは私に任せて・・・キューブを届けて」

　「でもッ！！」

　「私もミカエラと一緒に居るなら安心でしょ？」

二人でバンブルビーを助ける。
　そう告げるとサムは迷うかのように視線をさまよわせた。
　だが、そんな彼に対し近づいて来たレノックスがキューブを持って逃げるように告げる。
　拒否をするサムに彼は強い口調ですでにサムは戦士であることを告げ、彼にしか出来ない任務なのだと説明をした。

　「わかったよ。二人とも、ビーのこと頼む」

　「えぇ」

頷いたミカエラは歩き出したサムの背中を何か言いたげに見つめていたが、言葉が見つからないらしく悔しげな顔をして唇をかみしめる。

　「きっとミカエラの言葉ならどんなものでもサムの力になるよ」

サムのミカエラに対する気持ち、それは最初から解りきっていたことだ。
　当の本人も解っていたが答えるだけの勇気がなかった。だが、今このときでしか意味をなさない言葉もあるのだ。

　「サム！！」

意を決した顔をしたミカエラがサムの名を呼び彼に近づく。
　それはあの時、バンブルビーに乗ったことを後悔しないという言葉。
　サムとの出会いを悔やんではいないということだった。
　その言葉にサムは嬉しそうに笑った後、キューブを持って走り出した。

　「ミカエラ！あっちの方でレッカー車を見つけたの、ソレを使えばバンブルビーを運べるかもしれない」

　「・・・解った、私はレッカー車を運んでくるからミソラはここに居て」

車のことに関してミソラよりも知識も技術も上であるミカエラは、ミソラが示した方向に向かって走り出す。
　その姿を見送ったミソラはバンブルビーの足をジッと見つめる。