閉じていた目を開いたミソラはしばらくの間、黙ってそのままの体勢で横たわっていたがゆっくりと身体を起こすと辺りの様子を伺う。
　日が昇って間もないのか辺りは薄暗い中、ミソラはゆっくりと視線を動かす。
　簡素なベッド、最低限のプライベ－ドを尊重すると言うかのように間仕切りとしてつり下げられている布。
　既に見慣れた景色である事にミソラは自分は夢を見ていたのだと理解する。

　「それにしては・・・」

随分とリアルな夢だったと想いながら両手を見下ろす。
　キャノピーと名乗ったトランスフォーマーの手を掴んだ感触、冷たくも暖かな金属の感触を確かめるかのように手を握ったり閉じたりしていたときだ。

　「ミソラ？起きたのか？」

　「はい」

　「まだ寝てても良いんだぞ？」

　「いえ。目が覚めてしまいましたから・・・ちょっと早いですが朝食の準備をしますね」

　「悪いな」

身支度を整えたミソラは間仕切り代わりの布をずらす。
　ケイドと朝の挨拶を終えたミソラは限られた食材で朝食の準備を始める。狭いキッチンの扱いも大分慣れ始めてきた。
　昇ってきた太陽の光が辺りを明るくしていく。
　今日もまた一日が始まる、そう思いながらコーヒーを煎れ終えたミソラは見慣れた食材の乗った朝食トレーをケイドの元へと運ぶ。
　彼は難しそうな顔をして新聞を読んでいる。
　見出しはＴＲＦに関するもので、その三文字にミソラの顔が曇る。

　「最近は新聞でもＴＶのニュースでも引っ張りだこですね」

　「・・・あぁ。みたいだな」

対トランスフォーマー組織、通称ＴＲＦ。
　その名の通りトランスフォーマーの排除を政府から容認された組織だ。
　ＴＲＦの存在が政府から発表されたとき、ミソラは無言のままＴＶを見つめる事しか出来なかった。
　そんなミソラとは対照的にケイドは軽快に笑いながら墓場の風と比べれば可愛いものだ、となんとも余裕な言葉を口にした。
　新聞の一面に書かれているＴＲＦの活動に関する記事を何とも言えない気持ちになりながら見つめつつミソラはケイドの向かいの席に座る。

　「ケイドさん。お願いがあるんです」

　「ん？どうした？」

新聞から視線を逸らしたケイドへとミソラは自分の見た夢の内容を、そして救わなければならない存在がいるのだと告げれば彼の顔は渋る。

　「今のシカゴがどうなっているのかミソラも知っているだろう？」

　「はい。解っています」

　「この間の宇宙船墜落の件でＴＲＦがシカゴの警戒レベルを上げたことは？」

　「知っています」

　「・・・・それでも行くのか？」

　「行かなきゃならないんです」

必死に彼等を助けるべきだと懇願し続けた末にケイドは条件付きでシカゴへと向かうことを了承してくれた。