夜空にきらめく星々をミソラはジッと見つめていた。
　縋るように、何か希望を見つけるかのように夜空を見つめる目は微かに潤んでいる。
　オプティマスが地球を去ってからどれくらいの日々がすぎたのか、いつしか数えることすら忘れてしまった。
　最初の頃は待つという事を純粋に楽しむことが出来ていた。
　けれど通信も何も来ないことに次第に不安を感じ始めるようになり、気づけばオプティマス不在の日々を数えることをミソラは止めた。
　オプティマス不在の日々を数える事を止めてからこうして夜空を見上げるようになっており、夜空を見上げる時間は少しずつではあったが確実に長くなっていた。

　「駄目だなぁ・・・私って」

ちゃんと理解したつもりだった。受け入れたつもりだったのだ。
　けれど所詮ソレは上辺だけのものでしかなかった。
　当たり前のように側に居てくれた人が離れることの意味を何一つとしてあの時の自分が理解していなかったことにミソラは苦笑を浮かべた。
　あの頃の愚かな自分に会いに行ければ良いのに。
　そうひっそりと思ったときだ。

　『”お姫様”』

遠慮がちかけられた声。
　聞き慣れた音声にミソラはいつもと同じ笑みを浮かべながら振り返る。

　「ビー？どうしたの？」

声のした方へと視線を向ければビークルモードのバンブルビーの姿があった。
　
　『”そろそろ寝ましょう？”』

　「・・・・うん。そうだね。でも、もうちょっとだけ」

ここに居させて？
　そう告げながらミソラは夜空へと視線を向ける。
　この広大な星空のどこかにオプティマスが居るのだと思いながら彼の無事を心から願う。
　無事に帰ってきて欲しい。
　また側に居て欲しい。
　約束を守って欲しい。
　そう思いながら空を見上げていたときだ。

　『”彼は””帰ってくるよ”』

約束を破る人ではない。
　必ず無事に自分達の元へと、ミソラの元へと戻ってくる。そう信じていると言うかのようなバンブルビーの発言にミソラはゆるく息を吐き出す。
　
　「そうだね。きっと何事も無かったかのように帰ってくるよね。そうしてまたきっと、前みたいな日々が始まるんだよね」

穏やかだった日々がまた始まる。
　未だトランスフォーマーへの偏見と排除行動は消え去ってはいない。けれど少しばかりは風向きが変わったような気がミソラにはしている。
　それはケイドと出会えたからだ。
　


　「オプティマスが帰ってくるまでの間は俺の家に来い！・・・別にテッサが居なくなるから寂しいからとかいうそんなそんな理由じゃ無いぞ！！！男として惚れた女の事を心配するオプティマスの為に役立とうと思うだけだからな！！」



そっぽを向きながら一緒に暮らすことを提案してくれたケイドの言葉にミソラは素直に甘えることにした。
　大学に行くためケイドの元を離れるテッサは、研究第一の父親のことを酷く案じていた。一度スイッチが入ってしまえば寝食を無視してソレに没頭する事は解っており、自分やルーカスが居たのならば問題は無かった。
　それこそ言葉通りに殴ってでも休ませられたから。
　けれどその二人の内、一人は命を落とし、そして残りの一人であるテッサもケイドの側から離れる事となった。
　自分が居なくなった後の事をテッサは密かに憂いていたのだ。
　そんな矢先、ソレを解消するかのようにケイドがミソラを誘ったのを見てテッサがこっそりと握り拳を作ったことを知っているのは彼女の恋人であるシェーン以外誰一人として知らなかった。