大きな会議室に連れてこられたミソラは椅子の上に座る。
　サヴォイは誰かに呼ばれたらしくミソラをこの場に残して去ってしまっている。監視の目がない今のうちに脱出しなければ思い、一番邪魔になっている手錠を何とか外そうと試みるが、ガチャガチャとした音が鳴るだけだった。
　どうすることも出来ないことに諦めのため息を吐いた時、部屋の前が騒がしくなる。誰かが激しく言い争う声が聞こえた後、ドアが乱暴に開かれ見慣れない男とケイドが入ってくる。

　「ミソラ！！！」

駆け寄ってきたケイドはミソラの手錠を見ると顔を歪める。

　「それでも我々は紳士的な対応をしている」

　「紳士？手錠をつけて監禁する行為がか？」

咎めるかのようなケイドの視線に対しても男は動じることはしない。

　「どう判断するのかは人それぞれだ。イェーガー氏、君の席はそちらだ」

男、アティンジャーが示した席へとケイドは渋々座る。
　ミソラの隣にはアティンジャーがおり、それを見てケイドは助け出すのが難しいこの状況に対し舌打ちをする。
　見るからにアティンジャーはミソラに対して友好的ではない。
　彼にとってミソラという存在はトランスフォーマー達の仲間という認識しかないのだ。自分達と同じ人間でもない、この星を脅威に晒す存在でしかない。

　「私は少し君と話がしたいだけだ。そう、互いに満足の出来る会話をしようではないか」

激昂しているケイドに対し男は悠然とした態度で接する。
　男は家族を引き合いにしてケイドに対しオプティマスの居場所を教えるように迫る。それが叶わなければ、大切な娘の命は無いと言うかのような脅迫に対しケイドは無言のまま男をにらみ付けていたときだった。
　階下から何かが迫ってくる音が聞こえる。

　「プロペラの音？」

ミソラがその音の正体を言い当てたのと同時に、一台のヘリコプターが姿を現した。
　ヘリと一緒に上昇してきたバンブルビーが足でガラスを破壊し、破片が部屋の中を飛び散る中、ミソラはこの隙に逃げだそうとしたがそれよりも早くアティンジャーがミソラを捕まえる。

　『”お姫様！！！”』

　「ビー！ケイドさんを連れて逃げて！！私は大丈夫だから」

外に控えていたＳＰ達が威嚇射撃をする中、ミソラは引きずられる形でその場から連れ出される。
　屈強な男達がアティンジャーとジョシュアを守りながら移動を開始し、ここよりも安全である地下室へと向かう為、エレベーターに乗り込む。
　エレベーターの扉が開いたのと同時に聞こえてきたのは銃撃音と人の悲鳴だ。

　「・・・・クソッ！！」

舌打ちをしたジョシュアが慌てて音のする方向に向かって走って行く。
　人で溢れかえる中、ミソラもジョシュアに続く形で歩いているとオプティマスの姿を見つける。

　「オプティマス」

騒音でかき消えてしまいそうな小さな声であったが、それはオプティマスに元に届いたらしく彼の視線が向けられる。

　『・・・・彼女を解放しろ』

言い放つのと同時に向けられた銃口に対し、ジョシュアの顔から血の気が引く。彼はＳＰ達に向かい指を鳴らすとＳＰは無言のままミソラに着けられていた手錠を外す。
　微かに痣になってしまっている手首を労るかのように何度か擦りながら、ミソラは警戒した様子でオプティマスの元へと向かって歩き出す。
　彼の元に到着するのと同時にオプティマスは手を差し出してくる。

　『ミソラ、心配した』

　「・・・ごめんなさい」

縋るように抱きついてきたミソラをオプティマスは守るかのように、自身の手でそっとミソラを隠した。