家の中に雪崩れ込んできたスーツの男達は慣れた手つきで検査をしている。
　時折、草花に機械を向け何かの数値を確認した後、側に居た男に向かい回収するように指示を出していた。

　「ねぇ・・・なんだか嫌な予感がするんだけど」

眼鏡を確認したサムに向かいミソラが声をかけたとき、リビングの方からジュディの怒鳴り声が聞こえてくる。
　何事かと思いながら三人が声のした方に向かう。
　スーツを着た男達の中で一際偉そうな男はサムの姿を認識した瞬間、破顔してサムに話しかけており、その笑みを見たミカエラは顔を曇らせた

　「嫌な笑顔。いけ好かない奴ね」

吐き捨てるようにミカエラが呟いた声にミソラは苦笑を浮かべながら頷く。
　シモンズと名乗った男は偉そうな口調のまま、サムの身柄を拘束すると告げると男達が一斉に手を伸ばしてくる。
　ロンとジュディが子供達を守ろうと必死に抵抗をするのだが、多勢に無勢であったため次々と拘束されていく。
　ミソラもまた腕を背中に回され手錠をされる。

　「・・・痛ッ」

　「乱暴するなよ！！怪我してるんだ！！」

乱暴に拘束されたため、傷口に激痛が走りミソラが声を上げる。
　サムの言葉に顔色を変えたシモンズの視線が向けられる。
　思わず息を止めたミソラに近づいてきたシモンズはミソラを頭からつま先まで観察をした。

　「あー・・・お嬢さん、ちょっと失礼」

着ていた上着の裾をめくり上げたシモンズの目はミソラの腹部へと向けられる。
　一定の間隔を置いて負わされている怪我を見た瞬間、彼の顔つきは一変した。

　「このお嬢さんは直接施設に連行だ！！ヘリに乗せて隔離しろ！！関係者以外触れるなよ！！」

　「なに言ってんだよ！！ミソラ！！」

外に無理矢理連れ出されたミソラに対し、サムは抗議の声を出すのだが誰もその抗議に耳を傾けない。
　ロンは必死に声を張り上げて弁護士が来るまでの間は決して口を開くなと告げ、ジュディはどこでその傷を負ったのかと心配した声で問いかけてくる。
　
　「ミソラ！こいつ等の言い分を聞いちゃ駄目よ！！」

　「必ず助けるから！！」

同じ車に押し込められた二人からの言葉にミソラは頷く。
　一人、違う車に乗せられたミソラはきつく拳を握り視線を下に降ろす。
　隣に座った男がアタッシュケースを取り出し、ロックを解除すると慣れた手つきでピストル型の注射器を組み立て始める。

　「・・・何をするんですか？」

血の気の引いた顔をしてミソラは話しかけるが男は答えることはしない。
　間違いなく彼の持っているピストル型の注射器は自分に使われるだろうが、注射器にセットされた薬がどのような効果を持っているのか解らないミソラは、無駄だと思いながらもドアに向かい体当たりをする。
　助手席の男から大人しくしろと怒鳴られるのだが、黙っていることなど出来ない。
　問答無用で頭をガラスに押さえつけられた直後、首に冷たい感触がした。パシュンッという空気が抜けるような音が聞こえたかと思えば、すぐさま激痛が首に走った事でミソラは痛みで顔を歪める。
　歪む意識の中、ミソラは涙を流す。

　「・・けて」

答えてくれる声は無いと解っているのにその言葉をミソラは口にした。
　脳裏に浮かんだのは自分を見つめてきた青い瞳だ。
　来てくれるわけなど無いのだと思いながら、ミソラは意識を手放した。