前を走るカマロをミソラは黙って見つめている。
　車内には会話は何一つとしてない。
　何故、オプティマスが自分と一緒に行動をしたいと訴えたのか解らないミソラは口を噤み、早くウィトウィッキー家に着かないだろうかと考えていた時だ。

　『君はメガトロンを知っているのか？』

　「メガトロン？」

突然の問いかけにミソラは小首を傾げながらも、その名前を何度か口で呟くが聞き覚えの無いものだ。
　ミソラの様子をオプティマスはこっそりとスキャンする。
　心拍数と体温に変化は無いことから嘘を言おうとする様子は無い。ただ、先程の様子から間違いなくメガトロンのことを知っているのは明らかだ。
　
　『（”様”か）』

敬称をつけたことが酷く気にかかる。
　しかし、ディセプティコンに対して酷く怯えているのも事実だ。果たしてどちらが本当なのだろうかとオプティマスは考える。
　それに気になることはもう一つある。
　ミソラに触れようとした瞬間、凄まじい衝撃が体を走ったのだ。その衝撃は決して危害を加えるものでは無かった。むしろあの衝撃は。

　『（間違いで無ければ）』

そこまで考えたとき、まだ結論を出すのは早いと決めつける。
　時間を見つけラチェットに調べさせてからでも良いのだから。
　だが、もしも自分の考えが正しかったとしたのならば。
　助手席に座りメガトロンの名前を呟いているミソラを観察していると、結論が出たらしいミソラは自動で動くハンドルを見つめて口を開いた。

　「ごめんなさい・・・その名前に心当たりはないです」

　『そうか』

　「でも」

ハンドルから目をそらしたミソラは前を見つめる。
　前の景色を見ているのにその目は違うモノを見ているかのようにオプティマスには感じられた。

　「きっと無関係ではないと思います」

直感でしかありませんが。
　そう呟いたミソラは酷く疲れていた。
　サムと一緒に居たときには色々な表情を見せていた。
　恐怖であれ、感謝であれ、苦笑であれ。今、それがないことをオプティマスは残念に思う。

　「もしも、私がその、メガトロン、と関係があるのならどうしますか？」

問われた言葉にオプティマスは応えられず、沈黙するしかできない。

　「・・・サムやミカエラは関係ありません。だから、もしもその時がきたのなら」

手をかけるのは自分だけにして欲しい。
　消えそうな声で言われた言葉は震えていた。
　心拍数も体温も呼吸も先程と比べて変化があり、その変化は強い恐怖を抱いたときになるものだ。

　「着きましたね。私もサムと一緒に眼鏡を探してきます・・・ありがとうございました」

外に出るためミソラはドアに手をかける。
　無意識の内にロックをかけようとしたオプティマスが何を馬鹿なことを考えている間に、ミソラはオプティマスから下りてしまう。
　サムとミカエラと何か話した後、ミカエラを残して二人は家に向かって走って行く。

　『オプティマス、随分とらしくないな。どうせなら今ここでやっちまった方が良いだろ？ただでさえ問題がたくさんあるんだ』

ジャズからの通信にオプティマスは沈黙を続けた。
　先程の会話は全て仲間達に対してオープンにしていた。

　『一度彼女をじっくりと調べてみたい』

嬉々とした声でそう通信をしてきたラチェットに対し、仲間達は口々に『加減しろよ』『いや、そこは止めるべきだろう』『”このッ・・・変態！！”』という会話をしている。
　その会話を聞きながらオプティマスは今、己がするべきことを優先すべきだと言い聞かせるとトランスフォームをした。