淡い紫色の空と燃えるような赤い太陽。
　目がくらみそうな光から目を守るためにミソラは目元を軽く手で覆う。

　「今日も一日が始まるね」

　『そうだな・・・今日の天気は晴れ、気温は昨日と同じ程度だ』

どこかのテレビ局にハッキングして今日の天気をオプティマスが教えてくれる。
　
　「風があるから少し寒いかもね」

上着を羽織っていた方が良いかもしれない
　そう思いながらミソラは呟くと、オプティマスの外装を見る。色がはげ、痛々しい傷跡が至る所にあった。
　労るかのようにそっと外装を撫でてやると、その場所の傷が癒えたがそれは見せかけだ。
　内部の傷の方が深刻であることをミソラは知っている。
　本来ならば使えるはずの機能をオプティマスが使用しないことから、内部損傷がかなり深刻であることくらいミソラにも理解が出来た。

　「本当ならゆっくり直してあげたい」

そっと口づけをすると冷たい金属の感触が伝わってくる。

　『十分すぎるほど君には助けられている・・・私はまだ、君がいてくれるだけ助かっている』

だが、他の仲間達はそうも言っていられない。
　エネルギー補給を一つするのにもかなりの危険を伴うだろうし、損傷箇所があればそれを直してくれる者はいないのだから。
　下手に止まれば破壊されてしまう、下手に動けば破壊されてしまう。
　そんな状況に部下を巻き込んでしまったのは明らかに自分の失策だとオプティマスは思う。
　自分がもっと優れた司令官だったのならば、そう思った時だった。

　「らしくないよ？」

パシンッとドアを軽く叩かれる。
　意識を向けてみると満面の笑みを浮かべているミソラの姿があった。
　昔と変わらないその笑みにオプティマスはスパークが暖かくなる気がした。

　『そうだな』

　「そうだよ！みんなきっと無事だし、きっとまた前みたいに会えるよ！！」

だからそんな風に自分を責めないで欲しい。
　彼らを裏切ったのは人間だ。
　シカゴの悲劇を大きく掲げながらオートボット達の迫害を開始したのだ。彼らのおかげで助かったことがあるというのに。
　人間なんて簡単に殺せるだろう彼らは最後の慈悲を持って人間を傷つけず、逃げるという道を選択してくれた。

　「ありがとう、オプティマス。私は貴方が司令官で本当に良かったって思っているよ。貴方と出会えて本当に良かったって思ってる」

彼が来てくれなければ自分はずっとメガトロンに支配をされていたままだった。
　彼とで会わなければ自分はずっと弱いままだった。
　感謝の気持ちを込めてオプティマスにそう告げたミソラをオプティマスは黙って見つめる事しか出来なかった。

　『それは、私の方だ』

　「・・・そろそろ行こうか」

　『あぁ』

あまりゆっくりとしていることは出来ない。追っ手は恐らく確実に迫ってきているのだから。オプティマスの中に乗り込もうとミソラが足を掛けたときだった。
　朝の静寂を裂くかのような大きな音が一度、静かな街道に響き渡る。
　何が起こったのだとオプティマスは思い警戒したとき、ずるりとミソラの身体が外に向かって崩れ落ちていく。

　『ミソラ！！！』

咄嗟にシートベルトを伸ばし、宙へと投げ出されていたミソラの左腕に巻き付けたオプティマスはミソラの身体を自身の中へと引き入れドアを閉めた直後、銃弾の雨がオプティマスを襲う。
　追っ手が来たと判断したオプティマスは凄まじい勢いで走り出しながら、シートの上でぐったりとしているミソラへと意識を向けると、ミソラの腹部から大量の血が流れ出ておりシートを伝い足下に血だまりを作っていた。