そもそも、ミソラの事を狙っている者をカーリーは一人だけ知っている。
　その姿を見かける度にいつも不機嫌そうで、人間嫌いの赤いオートボットがミソラに対して特別な感情を抱いていることをカーリーは知っていた。
　ミソラの幸せを願い身を引いていたあのオートボットは、今回の件を知ってどう動くのだろうかと考える。
　下手をすると奪われてしまうかもしれない。

　「でも・・・幸せになれる方と居た方が良いのよ」

時々、カーリーはサムの後ろに見え隠れする女性を知っている。
　彼女ではなく、今は自分がサムの隣に居るのだが、時々、彼女にサムが取られそうな錯覚を抱く。
　サムはもう彼女とのことは終わったと言っていた。
　けれどその女性はどう思っているのだろうかと考える。色々と事情があって別れたらしいのだが、本当に納得して別れたのだろうかとカーリーは思う。

　「カーリー？どうしたの？」

急に黙り込んでしまったカーリーに気づいたらしいミソラがクッションから顔を上げて見つめてきていた。
　ハッとした顔をしたカーリーはにっこりと微笑み今、自分が考えていたことを誤魔化す。

　「ミソラはオプティマスの事が好き？」

　「勿論、好きだよ・・・どうしたの急に」

　「ううん。ちょっと気になっただけ」

迷うことなく答えたミソラの姿にカーリーはホッとする。
　脳裏に浮かんだ赤いオートボットに向かい、こっそりとご愁傷様だと囁く。

　「・・・一つ、聞いても良いかしら？」

　「なぁに？」

　「もしもの話なんだけど、オプティマス以外のオートボットを愛するとしたら誰にする？」

自分でも意地の悪い質問だと思いながらカーリーは笑う。
　もしも、彼女と自分の出会いが逆であったのならば。
　全ては仮定の話でしかないのだが、カーリーには気になったのだ。
　サムと過ごした時間が自分よりも長いミソラが答えることで、自分とサムとの関係が少しだけ変るかもしれない。
　そんな少しの恐怖と好奇心からの問いだった。

　「（馬鹿ね、私）」

もしもの話を聞いてどうするのだとカーリーは思い、忘れてくれと言おうしたときだった。

　「・・・多分だけど」

迷うように視線を彷徨わせながらミソラは答える。

　「それでも、それでも多分私は・・・・オプティマスを選ぶと思う。あの人が居なくなったとしても私はオプティマスの代わりに誰かを愛するなんて事はしないと思うな」

嬉しそうに、幸せそうにはにかみながら言われた言葉にカーリーは何も言えなかった。
　ただ、その返答に心から安心したと言うかのように微笑む。

　「カーリー、出会う順番はきっと意味をなさないよ。大丈夫だから、サムはちゃんとカーリーのことを愛しているから」

不安にならないで欲しい。
　ミソラの言葉にカーリーは無言のまま頷く。
　なんてことだと思う。
　自分はミソラを慰めるために来て貰ったのに、反対に慰めて貰うことになるとは。

　「ありがとう、ミソラ」

　「ううん・・・御礼を言うのは私の方だよ。ごめんね、カーリーが不安なときに来ちゃって。本当はサムと色々と将来のこととか話し合いたいよね？」　

　「そんなことないわ。むしろ、嬉しい」

知りたかった答えが分ったこと、不安だった気持ちが消えた。
　そうしてくれたのはミソラだ。
　だから、今度は自分が彼女の力になろう。そう思いながらカーリーは綺麗に微笑んだ。