カマロと同じく車からロボットへと変形をした車達。
　大きさや外装は違うものの、それはどう見てもカマロの仲間であることは明らかだ。
　ロボット達に囲まれる形となったミソラは身を寄せ合い、不安げな面持ちで自分達を見下ろす者達を見上げた。

　『アーチボルト・ウィトウィッキーの子孫、サム・ウィトウィッキーは君か？』」

　「そうだけど」

巨体を屈めたロボットの一体がサムと視線を合わせる。
　視線の位置が低くなったため、ロボットの顔を間近で見ることになったミソラは無意識の内に一歩下がると視線を少し横に逸らす。

　「大丈夫？」

何かを察したらしいミカエラがミソラの手を握ってくれる。
　警戒と少しの好奇心が混ざったような視線をロボットに向けたままミカエラは気遣ってくれた。繋いだ手から伝わる人のぬくもりに、強ばっていた体から力が抜け、ホッと息を吐き出す。

　「・・・ありがと、ミカエラ」

お礼の言葉にミカエラは応えず、繋いだ手をぎゅっと握り返してくれた。
　ゆっくりと深呼吸をしたミソラはサムの前にいるロボットの顔を見る。するとあることに気づいた。
　先程襲ってきたロボットは赤い目をしていたが、目の前に居るロボットは青い目をしているのだ。
　何か違いがあるのだろうかと思いながらその目を見つめる。

　「（私はどうして赤い目のロボットが怖いのだろう？）」

今日、初めて会ったばかりのはずだ。
　それなのに何故、恐怖を感じるのかが解らない。刷り込みのように心の中に植え付けられている赤い瞳をしたロボットへの恐怖心。
　そんなことを考えながらぼんやりとロボットの顔を見ていると、不意にロボットの青い瞳が向けられる。
　あからさまに視線を逸らしたミソラは早く脈打つ心臓を押さえるかのように胸元に手を添える。視線を逸らしても尚、向けられる視線から逃げるかのようにきつく目を閉じたミソラに気づいたらしく、そのロボットはようやくミソラから視線を逸らしてくれた。
　語られる彼らがこの地球に来た理由。
　彼らの戦い、そして終わり、新たな旅の始まり。

　『オールスパークを探しに来たのだ。メガトロンよりも先に見付けねばならない』

　「・・・オールスパーク」

オプティマスと名乗ったロボットが呟いた瞬間、ミソラは無意識の内にその言葉を呟いた。意識が霞み、自我が薄れ始めていく。
　サムとミカエラの視線が向けられる。
　その視線に気づくことをミソラはしない。
　虚ろな目をして地面を見つめており、聞き取れない小さな声で何かを言っている。

　「ミソラ？どうした？大丈夫？」

ミソラの顔のまでサムは手を振るがミソラは反応を示さない。
　このときになってサムはミソラが何かを言っていることに気づき、耳を近づけて何を言っているのか聞くことにした。

　「探す、オールスパークを、キューブを、あの方のために・・・メガトロン様の為に」

自身で呟いている言葉の意味は何も分からない。
　ただ、口から次々と出てくる単語をミソラは声に出しているだけだ。
　サム達は顔を見合わせて首を傾げるだけだが、オプティマス達は違った。敵であるディセプティコンのリーダーであるメガトロンに敬称をつけた事に対し、彼らの雰囲気は警戒したものへと変わった。

　「そして、見つけられた、あの方は。でも、」

そこから先の言葉は何一つとして出てこない。
　ただ、虚ろな目をして地面を見つめることしか出来ずにいたミソラに対し、しびれを切らしたらしいサムが少し乱暴に肩を揺さぶる。

　「ミソラ！」

　「っ！？」

弾かれるようにサムの顔を見たミソラは、何が起っているのか解っていないらしくぱちぱちと数度瞬きをするだけであった。