カマロの登場に絶句する三人。
　先程のパトカーのように襲ってくるだろうかと身構えていたが、カマロはその場に立っているだけで何もする気配は無い。

　「あれ、きっと日本製だ。間違いなく日本製」

　「・・・サム。変形するロボは日本でも作れないよ。多分、作りたいっていう欲求はあるだろうけど」

呆れたような声でミソラはきっぱりと言葉を返す。
　サムは警戒しつつもどこか好奇心を抑えきれないらしく、次々とカマロに向かい質問をしていく。
　カマロはラジオを使って返答をする。サムがラジオを使って会話をするのかと問いかけたときには手を叩き、あたりと言うかのように指まで指してきたのだ。

　「こっちの言い分は理解しているみたいだね」

言葉が使えないのは何故だろうかとミソラは考える。
　脳裏に浮かぶカマロの姿にきっとボロボロだからだろうなとひっそりと考えていると、ロボット姿から車へと戻ったカマロは扉を開いて三人を誘う。

　『”他に聞きたいことはあるか？”』

あるのならば乗れ。
　そう言われた気がした。
　最初に動いたのは案の定サムで、そんな彼に向かいミカエラは危険だと言いたげな眼差しを向ける。
　ミソラも同じだ。

　「５０年後にあの時乗っておけば良かったって後悔したくないだろ？」

振り返りそう言ったサムの顔が知らない人のように見えた。
　どこか頼りなかったはずなのに今、目の前に居るサムはミソラの知らない人のように感じられた。
　
　「そうね。・・・うん、そうかも」

何か納得したかのように歩き出したミカエラはサムの隣に立つとミソラを見る。
　これで反対しているのはミソラだけとなる。
　ジッと無言の圧力をかけてくる二人、どこか冒険を楽しんでいるかのようなその視線に文句の一つも言いたくなったミソラであったが、彼らはきっと意見を変えることはしないのだろうと悟ると一つ頷く。

　「あなたはパトカーとは違うんだよね？」

　『”お嬢ちゃん””この変態やろうが！！””一緒にすんじゃないわよ！！”』

気分を害した、と言うかのようにボンネットを開けたり閉めたりするカマロに対し、慌ててミソラは謝罪の言葉を告げるとカマロは納得したように大人しくなる。

　「私、後ろが良いな。ちょっと疲れたから横になりたい」

　「そうよね。怪我してるんだもの」

それ以外にも色々と気を遣ったりすることがあるのだが、ここはあえて口にしない方が良いだろうなとミソラは思い口をつぐむ。
　チラリとサムを見ると彼は少しばかり頬を赤くしており、目が合うと感謝するかのようにウィンクをしてきた。
　恐る恐るカマロに近づいたミソラはそっとカマロの中に乗り込む。

　「ごめんね。ちょっと汚しちゃう」

　『”問題ない””大丈夫か？””傷は浅いぞ！気をしっかり持て！！”』

意外にも気遣うことが聞こえたことにミソラは動きを止め、信じられない心境で瞬きをする。

　「ありがとう」

シートに座ったミソラはゆるく息を吐き出す。
　前の方ではサムとミカエラがおり、なんだか良い感じの二人の邪魔をしては駄目だと思い目を閉じる。
　色々なことが今日はあったなと思っているとカマロはゆっくりと走り出した。