アイアンハイドを蘇生させるという事をミソラはサイドスワイプに報告しに来たのだが、彼は人間達と合同演習をしている最中であった。アイアンハイド亡き今、彼の後を継いだのはサイドスワイプだった。不慣れな事であるが必死にオプティマスの右腕として指揮を執っているサイドスワイプと話すことが最近は減った。
　彼は常に忙しいのだ。
　解っていたことだが少しだけそのことを寂しいとミソラは感じていた。
　ジッと見ていたためか、サイドスワイプの青い目がミソラへと向けられる。彼は人間の指揮官に何か告げると足下のタイヤを動かして近づいてきた。

　『どうした？』

　「ごめんね、訓練の最中なのに。ちょっと伝えたいことがあって」

　『伝えたいこと？・・・今、休憩するように頼んだから少し話せるぞ』

掌を差し出してきてくれたサイドスワイプにミソラは迷うことなく乗る。
　彼の顔の位置まで持ち上げられたミソラは先程、オプティマスと話した内容を伝えるとサイドスワイプは驚いたように青い目を輝かせた。

　『それは本当なのか？』

　「・・・可能だと私は信じてる」

　『問題はないのかよ』

　「大丈夫だと思う」

　『俺が言いたいのはアイアンハイドのことじゃなくて、お前のことだよ・・・蘇生なんてしてお前の身体は問題ないのか？』

気遣うかのように見つめてくるサイドスワイプに向かいミソラは、微笑みながら大丈夫だと告げようとしたときだった。
　サイドスワイプの横に突然、ディーノが現れた。
　驚くミソラとは対照的にサイドスワイプは冷静だった。

　『大丈夫なわけないよな。お前はなんの確証もなく感情論だけでしか物事を口にしていない。俺の言っていることに間違いはあるか、bambina』

　「それは・・・」

ディーノの言うとおりミソラがアイアンハイドを蘇生させることに対し、何もなく終わるわけなど無いのだ。何かしら身体に影響を及ぼす可能性が高い。

　『司令官は了承したのか？』

　「うん」

　『ッチ』

苛立ったように舌打ちをしたディーノはどこかに向かって歩き出す。

　『ディーノ』

　『解ってる。少し頭を冷やすだけだ・・・訓練の時間になれば戻ってくる』

フェラーリへとその身を変形させたディーノは荒々しい運転で去って行く。
　残されたミソラはディーノが残したタイヤの跡をジッと見つめているだけだった。誰もが恐れて触れてこなかったことをディーノは指摘してきた。
　
　「ディーノに悪い事をしちゃった」

　『気にするな・・・それにしてもあいつも随分とまぁ変わったもんだ。前は人間のことなんか気に掛けていなかったのに、最近じゃ割と友好的になっていて助かってる。そう思えばお前への態度も理解出来る』

慰めるかのようにサイドスワイプが頭を指先で突いてくる。
　昔と変わらない彼の優しさにミソラは笑う。

　『俺はお前がやりたいことをやり通せば良いと思う・・・・何も出来ずに、後悔だけはするなよ』

少しだけサイドスワイプの青い目が辛そうに細められる。
　それはセンチネルによって尊敬するアイアンハイドが殺されるのを、ただ、見ていることしか出来ない自分を悔いているかのようで、ミソラは無意識の内に目の前にある彼の顔にそっと触れた。
　あの時のことは誰のせいでもないのだから。
　彼がこの苦しみを抱いていき続ける必要は無い。
　この苦しみを消すためにも、やはりアイアンハイドの蘇生は行わなければとミソラは改めて誓う。