if:あり得たかもしれない未来
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『蘇らせるのはオートボットだけのつもりか?』
『そうだ』
『君は相変わらず嘘が下手だな』
呆れたような視線を向けてきたラチェットに対し、オプティマスは沈黙を選ぶ。
脳裏に浮かぶのは赤い瞳をしたかつての友の姿だ。
道を違えた今でも彼の事を忘れたことはない。
『ミソラは恐れている』
『彼女を言い訳にするな』
不快だと言うかのようにラチェットはオプティマスの言葉を切捨てる。
『だが嘘では無いだろう?それはきっとラチェットも知っているな?』
『・・・あぁ』
渋々、と言った様子でラチェットは同意の言葉を口にした。
ミソラが今なお、ディセプティコンに、正確にはメガトロンに支配されていたときのことを夢見ては魘され、そしてそんな夢を見た日は一日中怯えていることをオプティマスは知っている。
『ならばそんな愚かな事を私が言えるわけなどない』
『君は一つ大きな思い違いをしている』
『思い違い?』
『彼女は、ミソラは君が思っているよりも弱くはないよ・・・シカゴでの戦いを終えたミソラは強くなった』
それが良い意味なのか、悪い意味なのか、今は解りかねるがと言いたげな声でラチェットは告げる。
『我々と共に戦い、生きたことにより、彼女は強くなった。なにより、君が居ることで彼女はどんな恐怖にでも打ち勝つことが出来る』
ラチェットの脳裏には今まで見てきたミソラの姿が思い出されていた。
最初こそ遠慮をし、我慢をし、言いたいことを堪えていたミソラであったが、少しずつだが自分というものを見せ始めるようになってきたのだ。
医者であるラチェットの言い分すら時には聞かないほどの無茶をし、自身の命を投げ捨ててでもオプティマスを救おうとした。
なにより、戸惑いながらもオプティマスへの思いを貫き通した。
ある意味で我が子の成長を間近で見たような気がラチェットにはしていた。
『彼女の強さを誰よりも一番よく知っているのは君だろう?』
『ラチェット』
『私には恐れているのは彼女ではないと思えるよ』
話は以上だと言うかのように去って行くラチェットの背をオプティマスは黙って見送る。
そっと自分の手を見下ろしたオプティマスはシカゴ戦を思い出す。
友の命を奪ったのは自分だ。
ギュッときつく自身の手を握りしめる。
この星に来てから自分は守りたい者が増えたと思う。そのことを悪い事だとは思わないし、後悔をすることもない。
『貴様はサイバトロン星の事を忘れてしまったのか?』
事切れる前にメガトロンが呟いた言葉に対する答えを、オプティマスは未だに見つけられなかった。
地球を第二の故郷としたが、だからと言ってサイバトロン星の事を忘れたわけでもない。ただ、メガトロンのように母星を蘇らせようと、救おうとはしなかったのは事実だ。
『・・・迷ってばかりの私を見てお前は笑うだろうな、メガトロン』
排気と共に呟いた言葉を聞く者は誰も居ない。