戻ってきた二人の姿を見たラチェットは解っていたと言うかのように一つ頷く。

　『解っていると思うが上手く行く可能性は低い。なにしろ残されたパーツが少ない者もいるのだから』

　「うん。解っている・・・それでも、それでも私はこの力を使いたい。もう一度、会いたい人に会えるのならば、その為なら私の力を使う事を恐れないよ」

しっかりとした自分の意思を告げたミソラの視線はラチェットへと向けられている。
　その目に宿る意思の強さからきっとこれは自分が何を言ったとしても聞きはしないのだろうなぁと早々に悟ったラチェットは、静かに排気をするとオプティマスへと視線を向ける。
　
　【本当に良いのかね？】

極秘回線で行ってきた会話に対してオプティマスは苦笑を浮かべる。
　本当にこの軍医は自分の事を解っているなと思えば、感謝と共に最大級の敬意を払いながら通信の答えた。

　【私も彼等にもう一度会いたいのだ】

　【解った】

全てを了承したと言うかのように極秘回線はひっそりと切られた。
　オプティマスとミソラの意思の確認を終えたラチェットが次に青い目を向けた先に居たのはレノックスだ。
　彼は何かを考えるかのように自身の掌を見つめていた。
　彼の掌にあるのはアイアンハイドの一部だ。失敗してしまえば失われてしまうモノをジッと見つめていたレノックスだったが、意を決したかのように顔を上げるとミソラへと近づく。

　「レノックスさん？」

自分をジッと見下ろすレノックスの顔は今まで見たことがない表情をしていた。
　少しの間、黙ってミソラを見つめていたレノックスだったがフッと息を吐くとガリッと乱暴に自身の頭を掻く。
　次に自分を見た時にはいつもの彼だった事からミソラはレノックスの中できっと何かしらの答えた出たのだと悟る。

　「奇跡を信じてみるのも良いかもな。うちのお姫様も会いたがっている」

ミソラの右手に渡されたアイアンハイドの一部。
　それは綺麗に磨かれており、レノックスが今日までどれほど大切にしていたのか解るほどだ。

　「必ず生き返らせてみせます」

　「あぁ。だが、無理はするなよ？」

　「はい！！」

力強く返事をしたミソラはオプティマスへと視線を向ければ、彼はしっかりと頷いてくれた。そのことに安心したかのように微笑みを返したミソラは、どこで蘇生を行うべきなのだろうかと考える。

　『ここでは少々人目が着く。故に以前基地があったディエゴガルシア基地が良いと思うのだが・・・』

　「解った。手配をしておく」

手続きに入るためにレノックスがこの場から居なくなる。
　その足取りがいつもよりも速くて、そして軽いことに気づいた三人だったがあえてそれを見ないふりをして去って行くレノックスの背中を見送っていた。

　『事はそう簡単に運ばないだろうな』

手続きと移動を終えることを考えれば恐らく一ヶ月はかかる。
　それは順当に全ての手続きを終えた場合だ。
　上が納得しなかった場合はそれ以上に時間がかかるだろうと判断したラチェットが淡々とした声で告げると、ならばその間に自分達は出来る事を話し合っておくことを決める。