眼前に広がる光景をミソラは黙って見つめていた。
　一定の規則で建てられている金属の建物。
　至る所から淡い光が放たれており、その光が貴金属に反射してきらきらと輝いている。
　飛行型のトランスフォーマーが数機、飛んでいく。
　かつて映像として見た光景が目の前に広がっている。
　あれから数千年の歳月が流れていた。
　ミソラはサムとカーリーが死ぬまでの間、地球に留まっていた。
　オールスパークの影響からなのかミソラの外見は変わることがなかった為、ＮＥＳＴ基地に滞在しながら、自分達の痕跡を消すという作業に追われることになった。



　「君が一人じゃないから安心だ」



かつての家族はそう微笑んで静かに息を引き取った。
　彼の中にあった微かなエネルゴンが消えた瞬間、ミソラは無言のまま涙を流しオプティマスに抱きついていた。
　彼も又、尊い友を失ったことを嘆いてくれた。



　「元気でね？オプティマスと仲良くね？」



色々な相談に乗ってくれたかつての家族の伴侶はそう微笑みながら息を引き取った。
　冷たくなった彼女の亡骸をミソラは黙って撫でていた。
　オプティマスもサムの妻であるカーリーの死を静かに悼んでくれた。
　全ての痕跡を無事に消すことに成功したオートボット達は地球を後にしたのだ。
　無論、ただでとは言うわけではなかったが。
　優れたテクノロジーの情報を提示し、ソレでようやく解放されたのだ。

　「・・・」

地球とは違う光景をミソラはジッと見つめる。
　荒れ果てて死の星とかしていたサイバトロン星に来てからすでに数千年の月日が流れている。気が遠くなるような歳月を掛けてこの星の復興は無事に終わったのだ。
　全ての命が絶えていた星から命溢れる星へとその姿を取り戻す事に成功した。
　
　『ミソラ』

自分の名を呼ぶ存在はこの星には一握りしか居ない。
　それは共に地球からサイバトロン星に帰還したオートボット達だけだ。
　彼らは現在、それぞれの特性を生かした部署での責任者として生活をしている。その中で、最もミソラと接することが多いのがオプティマスだ。

　「なぁに？オプティマス」

　『いや、姿が見えなかったから探した。外にいるのならば護衛を付けてくれと何度も言っているだろう？』

　「サイドスワイプはすぐにドライブに行こうって言うし、ディーノは私に意地悪ばかりするもの。護衛として駄目だと思わない？」

　『バンブルビーが泣いていた』

　「・・・今日の護衛はビーだったのね」

うっかりしていた、と言って微笑んだミソラに向かいオプティマスは困ったように排気を一つした。
　元首であるオプティマスの元に泣きながらやってきたバンブルビーの言葉にオプティマスは仕事を中断し、こうしてミソラを探しに来たのだ。
　
　『後で謝っておいてくれ』

　「そうする」

頷いたミソラは再び景色を見始める。
　平和な光景だと、幻想的な光景だと思えた。
　かつての故郷、地球が現在どんな成長を遂げているのか解らない。もしかしたらオートボットから託された情報を元にして兵器を作り、争いを起こし、人類が絶滅してしまっているのかもしれない。
　逆に又、平和を選びかつて無いほど成長をし、栄華を極めているのかもしれない。
　
　『後悔、しているのか？』

オプティマスの言葉にミソラは静かに首を横に振った。