3章:全てを見ていた月
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「決着を着けてください。メガトロン様」
かつて彼の元で生活していた時と同じように敬称を付ける。
明らかな怯えが今なおミソラの瞳に見え隠れしている。
怯えながらも自分を真っ直ぐに見つめてくる眼差しがメガトロンは好きだった。
その目は自分だけを見つめているものだとばかり信じていたのだが、ミソラは気づけば違う誰かを、青を持つ存在だけをヒタリと見つめるようになっていた。
『・・・敵を助けるなど愚かだな。お前は何がしたいのだ?』
「自分でもよく解りません。ただ、このまま終わることはお二人とも願ってはいないでしょう?だったら、私は私に出来ることをしようと思っただけです」
『フン、虫けらのくせに生意気な』
「私は・・・貴方の勝利を願うことはできません」
願うのは彼が生きてくれること。
青い瞳が再び自分に向けてくれることだけだ。
赤い瞳のメガトロンにも生きて欲しい、けれど彼は彼の持つ矜持を守るが為に負けることを認めないだろう。
『言うようになったものだ。俺の足下で泣きじゃくっていた虫けらが』
「あの頃とは違います」
自分の体に浮かぶサイバトロン語を見つめながら呟く。
完全に人ではなくなった自分の行く末なんて解りきっている。この星で生きることは出来ないだろう。
「貴方も、私も・・・」
自分を見つめてくる赤い瞳を見つめ返す。
恐ろしいと思う。
けれど、昔ほど恐ろしくは感じられない。
それはきっと自分も変わったからだ。そして彼も、メガトロンもまた。長い戦いは彼を疲弊させたのだろう。友との戦いは彼の心を削り続けたのだろう。
「悔いのないように最期まで戦ってください。」
再度メガトロンの外装に触れて癒やす。
もしかしたらこれは間違った判断なのかもしれない。
けれど、目の前でらんらんと輝く赤い瞳はセンチネルとは違う輝きを放っている。
同じ野望を抱く者でも追い求める形が違うからなのかその輝きはまるで違う。
『虫けらのくせに生意気な・・・・』
吐き捨てるかのように呟いた直後、メガトロンはミソラを掴んだままどこかに向かい移動を開始する。
人とは違う速さで移動するため、視界が凄まじ勢いで動いていたが、メガトロンは何かを発見する。
彼が発見したのは、前方で戦いを繰り広げている二体のオートボットだ。二体の位置を確認したのと同時にショットガンを取りだし、銃口を向けると引き金を容赦なく引く。
放たれた弾丸がセンチネルを貫き、崩れ落ちた隙を狙い彼の胴体部分に腕を突き刺すのと同じに配線をいくつか強引に抜く。
『オプティマス』
名を呼んだとの同時にメガトロンはミソラの体をオプティマスへと放り投げる。宙を舞うミソラに気づいたオプティマスが手を伸ばし、落下していたミソラを受け止めると怪我がないか確認をする。
『ミソラ』
「私は、大丈夫・・・オプティマスこそ腕が」
彼の片腕は根元からねじ切られていた。
ちぎれた配線からオイルが滴り落ちており、それがまるで血のように見えたミソラの顔が悲痛なものへと変わる。痛々しいその腕に手を伸ばそうとしたミソラであったが、それをオプティマスが止める。
『大丈夫だ。私にはやらねばならないことがある』
そう言ったオプティマスはある場所へと視線を向ける。
その先にいるのはメガトロンだ。彼は倒れたセンチネルを踏みつけており、楽しげに笑っている。裏切り者だとしてもかつて、自分に様々な知恵を教えてくれた師を足蹴にされることに対し、オプティマスは激しい怒りを覚えた。