3章:全てを見ていた月
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喉が焼けるような痛さを発しているがミソラは足を止めることはしない。
誰もが必死に戦っているのだ。
そんな中で自分だけが立ち止まっているわけにはいかない。現に、自分を捕らえようと迫ってくる船が何隻も空を飛行しており、ディセプティコン達が行く手を遮るかのように次から次へと現れるのだから。
それらから逃れるかのようにミソラは必死に走り続けながら頭上を見上げる。
空に浮かぶのはサイバトロン星。
彼らの故郷だ。
ドクリとオールスパークが脈打つ。
還りたいと。
「ごめんね、それはもう少しだけ待っていて」
いつか必ず時が来たら連れて帰る。
だから今は我慢をしてくれ、そう願いながら呟いた時だった。
『誰が来たかと思えば・・・貴様か、小娘』
聞こえてきた声にミソラは硬直する。
動かしていた足を止め、恐怖でる震える体をゆっくりと声のした方に向けるとそこにはメガトロンが居た。
ミソラと視線が合うと彼は昔と変わらぬ悪意のある笑みを浮かべる。
「ッ・・・・」
身を竦ませているミソラへと伸ばされた手が体を掴み上げる。
痛みを感じない程度に手加減をされているのが解っているが、長い間染みついた感情は消えてくれない。
己の掌の中で震えるミソラをメガトロンはジッと観察する。
どこにでも居る普通の人間だ。
けれど今となってはどこにでも居ない唯一無二の人間となったのだ。
『薄幸な人生だな小娘』
メガトロンにしては珍しく静かな声であった。
いつも顔を合わせれば罵声か怒声であった彼にしては珍しい行動にミソラは瞬きをしながら彼を見つめる。
頭部は破壊され中の配線が露わになっており、それをリペアすることなくメガトロンは生活をしていた。
痛々しいその姿を見てミソラはメガトロンらしくないと重いながらも、何故彼はリペアをしないのだろうか?と考えながら痛々しい傷口を見つめる。
「貴方もそうでしょう・・・メガトロン」
『・・・そうかもな』
かつてミソラを絶対的な恐怖で支配をしていたはずの存在は覇気のない声で言葉を返してきた。
その声を聞いてミソラは彼も今までの戦いで部下をたくさん失っていることを思い出す。オートボットにしろ、ディセプティコンにしろ、失ったモノがあまりにも多すぎた。
「オプティマスと戦わないの?」
『今の俺に奴と戦う力はない』
自嘲の笑みを浮かべながらいわれた言葉にミソラの顔が曇る。
メガトロンの実力は知っている。
圧倒的なその力はオプティマスと同じだ。故に、負傷した状態では勝ち目はない。
しばしの間、ミソラは考える。何が最良なのかということを。
「決着をつけたいのですか?」
『当たり前だ』
このまま終わるわけにはいかないのだ。
言葉にしなくともメガトロンがそう望んでいることが伝わってくる。どちらかが終わるまで、倒れるまでこの戦いは続く。
そう思っているのはメガトロンだけではない。
ミソラは彼を見上げる。
覇気の無い疲れた様子からエネルゴン不足なのは明らかだ。この状態で決着などつけれるわけがない、それを解っているメガトロンはどこか虚ろな目をして宙を見上げており、ミソラが知っている破壊大帝ではなかった。
だからなのかもしれない。
愚かだと解っていながら、間違っていると思いながらもミソラはメガトロンに向かいエネルゴンを分け与えると、伝わってくる強烈なエネルゴンにメガトロンの目が驚いたように開かれる。