3章:全てを見ていた月
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『お前は自分のしていることの意味が解っているのか!?』
ミソラが貼り付けられている柱の近くの地面をセンチネルは踏みつける。
怒気をはらんだセンチネルの気迫にミソラは恐怖故に息をのむ。
怯えた心が折れそうになるのを必死に堪えながら、自分の中にあるなけなしの勇気を奮い立たせながらセンチネルと対峙する。
「解っていなかったらこんなことはしない」
『愚かな・・・お前は自分の価値を理解していない!!星一つ救える、いいや!!神と同じ存在になれるのだぞ!?』
嘆くかのように片手で目元を覆ったセンチネルの背後、そびえ立つビル群の中を凄まじい勢いでこちらに向かってくる何かの姿をミソラの目は見つけた。
それがオプティマスであることに気づいたミソラは笑みを浮かべる。
体の内側が焼かれるような痛みを発する。
柱が無理矢理エネルゴンを奪おうとしているのだ。
限界が近いことは自分が一番良く分っている。
体に浮かび上がる文字が肌を焼いていく。
けれど、ここで諦めるわけにはいかないのだ。
「貴方の負けね」
『なんだと!?』
ミソラへと視線を向けたセンチネルは彼女の目に映っているのが何なのか確認するため振り返った時だった。
地上にて待機をしていたディセプティコン達が次々と破壊されていく。
立ち上る火柱の中、凄まじい勢いで迫ってくるオプティマスの姿に気づいたセンチネルの顔に微かな焦りが生まれる。
「私は神様になんかなりたくない。たくさんの人に奉られるような存在にはなりたくない・・・ただ、ただ私が一つだけ望んだことは」
柱を破壊するため銃口をこちらに向けたオプティマスの姿が見える。
人で無くなったとは言え、大元は人であるミソラの目にはオプティマスの顔は解らない。
だが、銃口を向けたオプティマスがピクリとも動かないことから彼の目にはきっと柱に拘束されている自分の姿が映っていることをミソラは理解する。
ここで柱を破壊しなければならない。
そう解っているのにオプティマスは引き金を引くことをためらっている。そのことがどうしようもなく、嬉しくて、どうしようもないほど悲しい。
「私はオプティマスと一緒にいたかった」
それだけを望んだ。
人と機械生命体である自分が同じ時を歩めるわけはない事くらい解っている。
だから短い間だけでも良いからオプティマスと同じものを見ていたかった。
オールスパークになってしまった自分が共に未来を見られないことくらい解っている
だからこの瞬間だけでも良いからオプティマスと歩めた未来を見ていたかった。
それすら許されなかった事が、どうしようもなくミソラには辛く、心が張り裂けそうなほど痛い。
一筋の涙が頬を伝い落ちていく。
「オプティマス」
彼に聞こえていることを願い声を出す。
全ての音が一瞬で遠のいていく。
センチネルの怒り狂う声も、オートボットとディセプティコンの戦いの音も聞こえない静寂の中、ミソラはオプティマスだけを見つめながら、穏やかに微笑むと彼に向かい残酷な言葉を告げる。
「約束を守って」
その為に必要な事をして欲しい。
それが彼の心苦しめると解っていても。
「オプティマス」
彼ならば、彼の手にかかるのならば何も怖くはない。
そしてこの星を救って欲しい。
「私を殺して」
もう残された手段はそれしかないのだから。