聞こえてくる破壊音と金属がこすれ合うかのような音と声、その音を聞いた瞬間、なぜだか解らないがミソラの背筋に嫌なモノが伝い落ちていく。
　嫌だと、引き返してと運転するミカエラに言いたかったが、言葉を失ってしまったかのように何も言えない。
　ならばせめて、ミカエラに訴えようとした時、幸運にもミカエラはこちらへと近づいてくるサムを見付けてしまった。

　「逃げろ！！」

　「なに？突然？」

　「良いから早く！！！」

鬼気迫る顔をしたサムはミカエラの腰に腕を添えた。
　スクーターに乗っていた二人はサムの腕に妨害される形となり、スクーターから無理矢理引きずり下ろされた。
　
　「うっ！？」

　「痛っ！！ちょっと、どういう意味！？」

ミカエラに押しつぶされる形となったミソラは呻き声を上げる。
　その声に気づいたミカエラは慌ててミソラの上から下りると、腕を掴み立ち上がるのを手伝ってくれる。

　「大丈夫？ごめん」

　「ううん、平気だよ・・・サム、いきなり何するの？危ないよ！！！そもそも、車がサムを狙うわけなんて無いでしょ？昨日から可笑しいよ？大丈夫？」

　「何悠長に会話してんの！？逃げるんだよ、逃げるの！！ロボットが襲ってきているんだよ！！」

　「サム、まだカマロのこと気にしているの？あれは残念な事だと思うけど」

　「いいから！！あっち見て、あっち！！！」

必死な顔をしたサムが指さした方向、そこには信じられない光景が広がっていた。
　二足歩行のロボットがこちらに向かい迫ってきているのだ。
　明らかに殺気立っているロボットの姿を見たミソラは言葉を失う。
　ロボットが歩く度に伝わってくる振動、金属のこすれ合う音、怒り狂ったかのような赤い瞳。
　ソレを見ているだけで体が震え出す。



　”小娘が！！殺されたいのか！！！”



頭の中で響く何かの声。
　それを拒否するかのようにミソラは両手で耳を押さえ、その場にうずくまる。サムとミカエラがミソラの腕を掴み、その場から逃げだそうとするが腰が抜けてしまったミソラは立ち上がることは出来ない。

　「立って、ミソラ！！」

　「すぐそこまで来てる！！」

焦る二人の声が遠くから聞こえる。
　動かなければ、立ち上がらなければ、そう思うのに体は思うように動いてはくれない。
　ならば自分を見捨てて二人だけでも逃げて欲しい、そう思い顔を上げたときだった。
　見慣れた黄色が目の前にあった。

　「カマロ？」

消えそうな声でそう呟いた瞬間、ドアが開いた。