3章:全てを見ていた月
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「ちょっと狭いけど、この部屋を自由に使って良いから」
案内された部屋は彼女が言っているほど狭い部屋ではなかった。
品の良いアンティーク調の部屋にミソラは顔を輝かせる。今まで暮していた部屋は軍事施設であるためか部屋は殺風景なものだったのだ。
久しぶりに見る女の子らしい部屋に無意識の内にミソラの気持ちは高ぶる。
「ありがとうございます、カーリーさん」
「カーリーで良いわ。いつもはサムと二人きりだからこうして人が増えると嬉しいのよ。特にそのお客様が可愛い女の子だとね」
ウィンク一つしてそう告げたカーリーに対し、ミソラはどう反応して良いのか解らなくなる。
休暇中、ミソラはサムとカーリーが同棲しているマンションで生活することとなったのだ。このマンションは彼女の上司が所有している物件の一つらしく、そこに一時的であれ住む形となるのだが、彼女が咎められはしないだろうかと考える。
「大丈夫よ、ウチのボスはそんな細かいことを気にしないだろうから」
「・・・本当は挨拶に行くべきなんでしょうけど」
「あまり人と会わない方が良いのでしょう?仕方ないわ、私から事情を上手く説明しておくし、それにウチのボスって女の子大好きだから色々な意味で会わせられないわ」
ベッドメイクを終わらせたカーリーが満足そうに一つ頷く。
「今日は疲れたでしょ?明日、色々とお話を聞かせてね?特にサムの昔話とか」
「はい」
気を遣ってくれたカーリーの言葉にミソラは頷くと、カーリーは早々と部屋を出て行ってしまう。
一人になったミソラはベッドに座ると息をゆるく吐き出す。
久方ぶり外に出たのだが無意識の内に緊張していたらしく、酷く疲れた。
「オプティマスに会ってから出かけたかったなぁ」
窓から見える景色を見つめながら呟く。
センチネルと今後の話をするため、基地を出て行った事は解っているのだがタイミングが悪すぎだったと思う。
「センチネル・プライム」
思い出すのはオプティマスよりも若干色の濃い青をした瞳。
観察するかのようなあの視線は好きではなかった。
過去に、自分を良いように実験台にしたセクター7の研究者達を思い出すから。
無意識の内に怯えだした体をミソラは押さえつける。
「大丈夫・・・大丈夫、だってあの人はオプティマスにとって尊敬すべき存在なんだから。だからきっと、大丈夫」
言い聞かせるかのように呟いた言葉。
けれど、その言葉には信憑性が感じられない。今まで、こんな事はなかった。オプティマスの通信を聞いてやってきたオートボット達に対し、不安を抱くことはなかったというのに。
ベッドから下りたミソラは部屋を出るとリビングへと向かう。
リビングに付けられているエレベーターに近づくと、見慣れた黄色い車がある。
「・・・ビー」
『”お姫様”』
「ちょっと良いかな?」
スリープモードになっていたバンブルビーであったがミソラに気づくと嬉しそうにヘッドライトを一度点灯させ、少し元気のないミソラの様子に何か察してくれたのか助手席のドアを開けてくれる。