青い目が何かを期待するかのようにセツナを射貫く。
　その視線の意味を何となく解っているセツナは苦笑を浮かべながらバンブルビーへと近づくと、そっと金属の頬へと掌を添えると甘えるかのようにバンブルビーは頬を押しつけてきた。

　「可愛いイタズラ蜂さん」

　『”私は””とてもセクシー”』

可愛くはないのだ、格好良いと言ってくれ、と言われた気がしたセツナは苦笑を浮かべるとバンブルビーの頬を軽く叩く。
　言われてみれば確かにそうなのだ。
　出会った時こそ記憶が何も無かったバンブルビーは愛くるしい存在でしかなかったが、記憶を取り戻し、自分の在り方を理解してからのバンブルビーはれっきとした戦士であり可愛いとはかけ離れた精神をしている。

　「そうね」

この星を守る為に必死に戦ってくれた。
　自分達が守らなければならなかった、導かなければならなかった存在は、いつの間にか誰かを守れる存在になっていたのだ。

　「ありがとう」

込み上げてくる感情が知らず知らずの内に涙腺を刺激して、気づけば今にも泣き出してしまいそうな程に視界を歪ませていることにセツナは気づくがそれを無視し続ける。

　「貴方と出会えて良かった」

チャーリーは救われた。
　ただ、それだけがとても嬉しい。
　そう伝えるかのように微笑んだセツナの眦から涙が伝い落ちていく。
　風に吹かれた涙がやけに熱く感じられるのは、きっと愚かにもこのままの関係が続けば良いと願う自分の浅ましさからなのだろうと思ったセツナは涙の痕を拭う。

　『”君は”』

若干のノイズ音を混じらせながらバンブルビーは問う。

　『”私と出会えて良かった？”』

チャーリーという存在を抜きにして、セツナがバンブルビーとの出会いを嬉しいとは思わないのか？と問うかのようにバンブルビーは告げる。
　その言葉にセツナは顔を大きく歪めながら顔を両手で覆う。

　「そんなの決まっているじゃない」

嗚咽混じりの声を聞いたバンブルビーがオロオロと動揺しているが、セツナはそれに気づかぬまま告げる。

　「私はね」

込み上げてくる言葉をセツナは口にする。
　思い出すのはバンブルビーと初めてであったときのことだ。
　ボロボロのビーグルを見つけたとき、ソレをチャーリーと直して走らせるようになって、一緒にドライブをした時の記憶。

　「ビーと会えて良かった」

バンブルビーだったからこそ、自分達は変われたのだとセツナは思いながら告げる。
　他の誰かだったのならばきっとこんな風にはならなかった。
　そう思いながら見慣れた青い目を見つめると、バンブルビーは嬉しそうに目を細めていた。
　その仕草がまるでセツナの気持ちも、言わんとしていることの意味も解っているというかのようなものだったことにセツナは目を細めながら微笑む。

　「ありがとう、ビー」

　『”お礼は””キスして”』

まさかの発言にセツナは唖然とした顔を向けることしか出来なかった。
　我儘すぎる発言を聞いたチャーリーの眦がつり上げられ、不快だと告げるかのように淡々と足先を地面に叩きつける音が響く。

　「あー・・・うん。そっか」

チャーリーとバンブルビーの顔を交互に見ていたセツナだったが、今日に至るまでの間、バンブルビーが自分達の為にしてくれたことを思い出すとキスを強請ることくらい可愛いものではないか、と思うとそっと金属の頬に唇で触れた。