タワーを肉眼で確認できる位置まで来たバンブルビーは、ゆっくりと停車をするとチャーリーとセツナに対して降りるように伝えるかのようにドアを開く。
　車から降りたセツナは極力足音を立てないように忍び足で近くにあったゴミ箱へと身を潜めた。
　ロボットへと変形したバンブルビーは鋭い目をしてタワーに居る敵の姿を確認すると、彼等の作業がすでに終りに近い事を悟ったらしく残された時間がないことを悟る。

　「それで？作戦はどうする？」

声を潜ませながらチャーリーがバンブルビーへと問いかけるとバンブルビーは任せろと言うかのように頷くと、チャーリーの身体を両手で抱き上げると金属片やら木片やらが入っているゴミ箱の中へと身体をそっと降ろした。

　「これが作戦？こんなのってないわ！！！」

ここで大人しく待っていろ。
　そう言うかのようなバンブルビーの決断にチャーリーは抗議をするが、バンブルビーは駄目だと言うかのようにフルフルと首を振ると今度はセツナの身体を持ち上げ、チャーリーの隣へとそっと降ろした。

　「ビー。勝算はあるの？」

離れていく金属の指を両手で掴んだセツナが問いかけた言葉に対し、バンブルビーは困ったように視線を彷徨わせる。
　それに気づいたセツナはバンブルビーが特攻するつもりなのだと悟ると、その考えは駄目だと言うかのように首を振り必死に思い止まるように指を掴む。
　シャッターとドロップキック相手に考えも無く特攻したところで勝ちは望めない。
　そう告げようとした時だ。
　バンブルビーから突然、聞き覚えのある音楽が流れてきたのだ。

　「スミス・・・聞いてくれたんだね」

チャーリーが前に色々とバンブルビーに音楽を聴かせたとき、その時こそ好きではないと言うかのように拒絶をしてカセットを吐き出したが、チャーリーが好きだと言っていた事をバンブルビーはちゃんと知っていた。
　だからこうしてすぐさま使えるように音源を保管していたのだ。
　
　「狡いよ、ビー」

バンブルビーが流したスミスの歌は大切な人に、愛する人に傷ついて欲しくない、と訴える内容の歌だった。
　それ故にチャーリーもセツナもバンブルビーに対して何も言えなくなってしまう。
　セツナは掴んでいたバンブルビーの指から手を離してしまうと、バンブルビーはセツナの髪をそっと撫でる。
　まるでごめんね、と告げるかのような優しい動きにセツナは今にも泣き出しそうな顔をしながら頷くことしか出来ない

　「ここで大人しく待っている。それに私が行ったところで出来る事なんてきっとないだろうからね」

足手まといになる可能性の方が高い、そう判断したチャーリーの言葉を聞いたバンブルビーはセツナの紙から指を離すと今度はチャーリーの髪をそっと撫でる。
　
　「ビー。無茶だけはしないでね？」

セツナがそう告げればバンブルビーは解っていると言うかのように頷くと、ゴミ箱の蓋をゆっくりと閉めていく。
　完全に閉められたゴミ箱の中は真っ暗で、閉鎖的な空気にセツナは少しだけ気分が悪くなったときだ。

　「これ意外と重いわね」

ゆっくりと蓋を開いたのはチャーリーだ。
　何をしているのだ？と視線で訴えながらもセツナも金属の蓋を持ち上げるとずしっとした重さが伝わってくる。

　「ビーの勇姿をこの目に焼き付けようかなぁと思ってね。それに万が一の時には飛び出して、その辺に落ちてるゴミでも投げてやろうかなぁって」

まさかの発言にセツナは驚くが、確かに二対一で戦いが行われればバンブルビーは苦戦を強いられることは間違い無い。
　自分達に出来る事があるのならば、手助けできるのならばそれを迷うことなく実行すべきだと言うかのようなチャーリーの発言にセツナはなる程、と思いながら頷く。
　いざという時には自分もチャーリーに続こう、そう思いながらバンブルビーの後ろ姿を見て居ると、バンブルビーはタワーに向かって攻撃を開始した。