バンブルビーは不機嫌そうに青い目を細めながらセツナの父を見ており、その顔から伝わってくるのは『絶対に嫌だ』という強い拒絶だ。
　バンブルビーの顔を見たセツナはこれは何となく拙い展開だなぁと思いながらも、何とかしようと必死に考えていた時だった。

　「Ｂ－１２７。君にも君の主張があると思うのだが、」

　『”あんたの意見はお断り””私は私の道を行く”』

父がしゃべっている最中にかぶせるかのようにバンブルビーは音楽を流すと、これ以上のやり取りはお断りしますと言うかのようにそっぽを向く。

　「なっ！？」

まるで反抗期の子どものようなバンブルビーの姿に父は絶句する。
　自分達よりもこの金属生命体が優れていることはシャッター達と接したことで解っていたのだ。彼等は自らを軍に所属していると言っていたように毅然とした態度を常に取っていた。
　その彼等の敵であるバンブルビーも恐らくは凜々しい軍人なのだろうと思っていたのだが、バンブルビーはその考えを打ち砕くかのような行動を取った。

　「彼はいつもこんな感じなのか？」

唖然とした様子でバンブルビーを指さしながら父はセツナへと問いかけてきた。
　何となく父が伝えたいことが解ったセツナは苦笑しながら頷く。

　「うん。基本的には悪戯っ子だよ」

　『”私の””可愛いイタズラ蜂さん？”』

セツナの声を使って自分の事をそう告げたバンブルビーはその場にしゃがみ込むと、頭部パーツをピコピコと動かしながらセツナに対して褒めてと言うかのように頭を差し出してきたため、セツナは呆れたような顔をしつつも頭を撫でてやる。

　「おじさん。見ての通りビーは私とセツナとメモしか信用していない」

チャーリーはこのチャンスを見逃さなかった。
　バンブルビーは自分達しか信じていない以上、共に行動する事が出来るのは自分達だけしか居ないのだから行かせてくれ。
　そう訴えるようにチャーリーはセツナの父を見つめていると、降参だと言うかのように父はゆっくりと頷いた。　

　「Ｂ－１２７。この子達の事を頼んでも？」

　『”私に出来る事は限られている””それでも私はやりとげる”』

任せろと言うかのようにグッと指を立てたバンブルビーに対し、父はお願いすると言うかのように頭を下げる。
　父の姿を見たバンブルビーはロボットの姿から車へと変形すると運転席と助手席のドアを開き、中に乗るように促してきたためチャーリーとセツナはバンブルビーへと近づいたときだ。

　「俺は残る」

　「メモ？なんで？」

聞こえてきたメモの声にチャーリーは不思議そうな目をして彼を見つめると、メモは傷ついた自分の腕を目で示す。
　この傷では足手まといだ、そう言うかのようなメモの姿にチャーリーはその傷が自分を守った際に負ったものである事に気づく。

　「それにさ、アイツ等を足止めするヤツも必要だろ？」

ニッと笑ったメモはこちらに向かってきている軍人達を指さす。
　彼等に対して嘘の情報を与えて混乱させ、チャーリー達の邪魔をさせないようにすると告げたメモの言葉に同意したのはセツナの父だ。

　「私も彼に協力する。彼１人では信憑性がなくとも、私が言えばそれなりに信じる奴らも居るだろうからな」

　「父さん、それって・・・」

　「もしかしたら明日から無職になるかもしれないなぁ」

苦笑を浮かべた父はセツナに対して大丈夫だと言うかのように微笑みながらポンッと背中を軽く叩くと、バンブルビーの方に向かってそっと押し出す