軍用車の周りには銃を持った軍人達が立っており彼等の持つ銃口が自分達に向けられていることに気づいたセツナはバンブルビーに向かい告げる。

　「ビー！バックして！！」

ここから逃げなければならない。
　そう思い告げたのと同時にバンブルビーはバックしようとしたが、いつの間にか背後から軍用車が来ていたらしく完全に退路を塞がれてしまう。

　「嘘でしょ？なんで、軍人がこんなところにいるわけ？」

強ばった声でハンドルを握ったままチャーリーは呟いた時、軍人達の中から指揮官らしき厳つい男が前に出てくる。

　「車から降りろ！！」

顎をしゃくり早く降りろ、と言うかのような男の横暴な態度に対してチャーリーは不服そうに顔を歪めるが、相手が銃を持っているため下手な行動は出来ないと判断すると運転席のドアをゆっくりと開けると車から降りる。
　助手席のメモが降りるのを確認したセツナは助手席のシートを倒し、車から降りようとしたときカーラジオから心配するかのような音が聞こえてきた。

　「大丈夫だから」

　「何をしている？早く降りろ！！」

　「・・・・良い子にしていてね？可愛いイタズラ蜂さん？」

バンブルビーを安心させるかのようにハンドルをそっと撫でたとき、指揮官らしき男が余計な事をするなと言うかのように鋭い声で急かしてきた。
　ほんの数秒で何も変わらないのになぁと思いながらセツナは助手席側のドアから外に出た時だ。

　「セツナ！！！」

自分の名を呼ぶ声が聞こえた為、その方向を見たセツナの目に映ったのは父の姿だった。
　最後に見たときよりも少しばかり窶れた顔をしている父はセツナの姿を見ると安堵の笑みを浮かべる。
　セツナも父の無事な姿を見て笑みを浮かべながら手を軽く振ったときだ。
　いつの間にか側に居たらしい軍人達により３人は拘束され、車から引き離されそうになる。

　「痛いッ！！」

　「ちょっと離してよッ！！！」

容赦なく腕を背中へと回されたセツナとチャーリーが抗議の声を上げると、その声を聞いたセツナの父が指揮官らしき男に対して「子ども達に危害を加えるな」と強い声で抗議をしたときだ。
　チャーリーの悲鳴を聞いたバンブルビーが我慢の限界だと言うかのように変身すると、チャーリーを捕まえている軍人を吹き飛ばす。

　「ビー！メモとセツナも助けて！！」

チャーリーの頼みに対してバンブルビーはすぐさま反応する。
　セツナを捕まえていた軍人を指ではじき飛ばすと、その身体を自分の方へと引き寄せ、次にメモを助ける為に行動を開始したが、軍人達はメモだけは確保すると言うかのように２人がかりでメモをどこかへと引きずっていく。
　それに気づいたバンブルビーが動こうとしたときだ。

　「動くなッ！動けば発砲するぞ！！！」

指揮官の男が発したあまりにも穏やかではない言葉にチャーリーとセツナの顔が恐怖で引きつる。
　バンブルビーの装甲がどれくらい強度があるのか解らない。
　一発か二発ならば耐えられるかもしれないが、今居る軍人達が一斉に発砲したらどうなるのか想像が出来ず、最悪な状況を思い描いたときだった。

　「バーンズ少佐ッ！子ども達が居るのに発砲するのかッ！？」

信じられない、即刻命令の撤回をしろ、とバーンズへと詰め寄る父の姿を見たセツナは今ならばメモを助けて逃げられると思った時だ。

　「俺のことは良いから逃げろッ！！早くしろ！！！」

軍人達に拘束されたメモは自分を助けることを諦め、この場からバンブルビーを連れて逃げるように叫ぶ。