キッチンに関する事はチャーリー、リビングの整理をセツナ、家具などの処理をメモ、とそれぞれが役割を分担するとすぐさま部屋を元に戻すために行動を開始した。
　忙しなく動きながらセツナは昨夜あった電話の内容をチャーリーへと伝えると、いつの間にかチャーリーは動かしていた手を止めてとの場に立ち尽くしていた。

　「ビーを守らなきゃ」

チャーリーの知っているバンブルビーは戦うなんていう野蛮なことは絶対に出来そうもない。万が一、敵に見つかれば抗う事なく一瞬でその命を奪われてしまう。
　それだけは嫌だと思いながらチャーリーはガレージを見つめる。

　「私なりに考えたんだけど、一時的にハンクおじさんの所に匿ってもらえないかな？」

　「・・・私もその意見には賛成だけど」

歯切れの悪い言葉でチャーリーは返答すると、無言のまま荒れ果てた室内を見渡す。
　たった数時間独りにしただけでこんな状態にしてしまった。
　ハンクの所で大人しくしていろと言ったとしても、絶対に無理だとチャーリーは確信を抱く。

　「ビーに１人で留守番は無理だろ？」

ＴＶを何とかしてＴＶボードに戻そうと奮闘していたメモが至極当然のことのように告げた言葉に対し、チャーリーもセツナも何も言うことが出来ずに目を逸らすことしか出来ない。

　「セツナの言うようにバンブルビーを守る為に隠すってのも良い方法だけど、それは少しリスクが高すぎるな」

３人の中で一番客観的に物事を考えられるメモはそう告げるとＴＶを持ち上げることを断念した。さすがにこの重さのＴＶを１人で持ち上げるのは不可能と判断したのだ。
　だからと言ってチャーリーかセツナに協力を申し出るのも、まるで自分が非力だと言っているかのように思われたためそれを口にせず、ひっくり返っている１人崖用のソファに目をつける。

　「それじゃどうするのが最善策なわけ？」

腰に手を当ててチャーリーはメモに何か考えがあるのか？と問いかけると、メモは少し考えてから答えた。

　「一番最悪なのはビーの正体が俺達以外に知られることじゃないか？」

最終的にはハンクにバンブルビーの正体がばれ、１人、また１人とバンブルビーの秘密を知ってしまう者達が増えていくことは間違い無い。

　「メモはビーがこのままチャーリーの元で隠れているのが一番良いっていう事？」

　「まぁそうだな。下手に移動して、その場所で誰かに正体を知られるよりは一カ所に留まっておいた方が良い。今の段階で動き回って隠れられそうな場所を誰かに知られているのはマズイだろ？いざって時に使えないことの方が危険だ」

隠れ家に逃げるのは最終手段にしておけ、そう言うかのようにメモが提案してきたことが今の自分達にとって、バンブルビーにとって一番良いこととのようにセツナにも思えた。
　秘密の隠れ場所が誰かに知られ、そこに避難した矢先に攻撃をされてしまうことだけは阻止すべきだとセツナも思うとチャーリーへと視線を向ける。

　「メモの言うとおりにした方が良いかもしれない」

　「・・・解った。ビーはこのまま私の家に隠れてて貰うわ。今日のことで外出禁止って名目にして当分の間はガレージに居てもらう。その間に、何かしらの対策を考えておこう」

何事も前向きに物事を考えよう、そう言ったチャーリーは笑うと自分の作業へと戻っていく。落ちていた皿の中で割れていないモノを手に取るとそれを水切り籠の中へと入れていた時だ。
　チャーリーの家の電話が鳴り響く音が突然聞こえたため、全員がビクッと身体を震わせて音のする方を見つめる。

　「あー・・・ママかもしれないから出てみる」

もしかしたら帰宅するのが遅くなると言う連絡かもしれない、淡い期待を抱きながらチャーリーは受話器を持ち上げると耳に当てる