上機嫌でチャーリーはバンブルビーへと話しかけていたが、セツナの方へと視線を向けるともっと早くに教えてくれれば良かったのに、軽く文句を言うかのようにな口調でチャーリーはセツナに対してやんわりと抗議をする。
　嬉しそうに笑っているチャーリーに対し、セツナは居たたまれないと言うかのような顔をすると静かに首を振った。

　「私も最初こそビーの仲間と知り合いなのかもしれないって思った。でも・・・前に森の中でビーが見せてくれた映像があったでしょう？」

大きなロボットが語っていた言葉の中には「戦争」という何とも不吉な言葉を口にしていた。

　「父さんが出会っている存在がビーの仲間だとは限らない」

　「・・・・それはどういう意味？」

　「もしかしたらビーの敵と父さんは接触をしている可能性だってある」

戦争とは異なる主張を持つ者達が行う戦いだ。
　バンブルビーが何らかの形でその戦争に参加していて、地球に来たのも何か目的があってきなのかもしれないのだ。任務を遂行するために敵の監視から逃れるため車の姿になって身を潜めていたときに、何かしらの事情で記憶を失い、そしてチャーリーと出会ったという可能性とて否定は出来ない。

　「敵対勢力がすでに地球に来ているって事か？」

右手をそっと上げながらメモが意見を言うとセツナはためらいながらゆっくりと頷く。
　バンブルビーと初めて対峙したとき、彼はレンチを持ったチャーリーに対して酷く怯えた。いくら記憶が失われているにしたとしても、今になって思えばあの怯え方は明らかに異常だった。
　バンブルビーは記憶がなくとも自分が狙われているのだということを自覚していたのだ。

　「これは私の完全な憶測でしかない」

あくまでもセツナの主観による考えだと前置きをしたセツナは静かな声で告げる。

　「父さんは接触している何かに対して良い印象を抱いていない。私に対しても危ないことはするなって言っていたから・・・」

もしかしたら自分は選択を間違えてしまったのかもしれない、バンブルビーを追い詰めるような選択をしてしまったのかもしれない、そう思ったセツナは恐怖からか心臓が早く脈打ち始めた事を悟ると息を呑む。

　「セツナ」

冷静でいてどこか優しげな声でチャーリーがセツナの名を呼ぶ。

　「今は先のことは考えないようにしよう」

　「え？」

　「今後の対策に関しては、今夜おじさんと何を話したのか決めた方が良い。私は、明日は朝からバイトが入っているから、バイトが終わったらセツナの家に寄るからそのまま家のガレージで話そう」

先のことを憂いてばかりいても意味は無い。
　ならば情報を入手してから方針を決めた方が良いと言うかのような口調でチャーリーは告げると、慰めるかのようにセツナの肩をポンポンと叩く。

　「もうそろそろ１８時だから家に入らないと」

　「うん」

　「私のバイト中に何かあったらメモに報告してね？メモはセツナから連絡があったらすぐに私に電話してよ？」

　「了解！アメリカンドックの電話番号は暗記してるから安心してくれ！！」

ぐっと拳を握ったメモの言葉にチャーリーは少しばかり心配そうな眼差しを向けた後、気持ちを切替えるかのようにそっと息を吐く。

　「明日、待ってるね」

そう告げたセツナはバンブルビーから降りると、ヒラヒラと手を振ってから自宅へと足を踏み入れた。