ガチャガチャと音を立ててラジオのチャンネルが次々と変えられていくのをチャーリーとセツナは困惑した顔をして黙って見て居ることしか出来ない。

　「何をしようとしているの？」

何かをしようとしているのは解るのだが、その肝心の何かが解らず手助けをすることすら叶わない状況にチャーリーは不安げな顔をしてバンブルビーを見上げていた時だ。
　セツナは不意にドアの方から人の話し声のようなものが聞こえてきた気がした為、ドアの方へと視線を向ける。

　「ねぇチャーリー・・・今さ、人の声みたいなの聞こえなかった？」

　「え？もしかしてママが帰ってきた？」

だとしたら色々と今の状況はマズイと判断したチャーリーがバンブルビーに対し、一度車になって欲しいと言おうとしたときだ。
　ドンドンッと乱暴にノックがされた直後、こちらの返答を聞かずにドアが勝手に開いて１人の青年がガレージの中へと踏み込んでくる。

　「やぁ！夜分遅くに失礼するよ？僕は・・・・」

ガレージの中に入ってきたのはメモだ。
　彼は室内にいたバンブルビーを見て不自然な状態で言葉を詰まらせると、顔から血の気を引かせて黄色のロボットを見てガタガタと震え出す。
　チャーリーでもセツナでもない声を聞いた瞬間、バンブルビーはラジオを鳴らすのを止めると驚いたように青い目を見開いたが、すぐさまチャーリーとの練習を思い出したらしく車の姿になる。

　「あ・・・・あぁぁぁ！！今の何！？ねぇ！！何アレ！！」

ロボットから車になったバンブルビーを指さすメモは混乱状態になっており、このまま彼が外に出て誰かにバンブルビーの事を話せば大問題になると瞬時に判断をしたチャーリーとセツナは、メモの両腕を掴むとガレージの奥へと引きずり込む。

　「ちょっとお話ししようか？ね？」

にっこりと微笑みながらチャーリーはメモに向かい話しかけるが、メモにはチャーリーの声が届いていないらしく恐怖で引きつった顔をバンブルビーへと向けたままだ。
　これはもしかするとパニック状態になってガレージから飛び出してしまう可能性が高いと密かに判断したセツナはこっそりガレージのドアの前に立ち、メモが逃走するのを何としてでも食い止めようと決める。

　「えぇっと。ビックリしたよね？そうだ！！説明するから落ち着いて聞いてくれる？」

　「説明？・・・・あ、あぁ。そうだね。うん。説明をして欲しいな」

少しだけ冷静さを取り戻したらしいメモはチャーリーの提案に同意すると、縋るような目をしてチャーリーを見つめる。
　どう言えば納得してもらえるのか、何を話せばバンブルビーが危険な存在ではないのか、チャーリーも少しばかり焦る気持ちを抱きながらも必死にメモを説得できるように言葉を探していたが、ゆっくりと深呼吸をすると静かな口調で告げた。

　「ごめん。ちょっと説明できそうにない」

　「・・・えぇぇぇ？」

嘘だろ？と言うかのような目をしてメモはチャーリーを見つめていたが、変身する車の秘密を知ってしまった自分はもしかしてこのまま殺されてしまうのではないか？と思ったらしく、恐怖故過呼吸が乱れ始める。

　「落ち着いてよ。・・・大丈夫だから」

　「落ち着けないって！！」

　「そうだよね。うん。言ってることは正しい。そうだ。落ち着くために自己紹介をしようよ？私はチャーリー。あっちにいるのはセツナ」

メモの動揺につられてしまったらしいチャーリーはこの場の状況を解決させるのには随分と不自然な流れを作り出す。
　名前を呼ばれたセツナは初対面ではないのになぁと思いながらも、愛想笑いを浮かべながらヒラヒラと手を振る。

　「あ、あぁ。俺はメモ。よろしく」

　「よろしく」

ガシッと握手をした２人はにっこりと微笑むが、その笑みは貼り付けたかのような気持ちの悪い笑みだと思ったセツナは自分も似たような笑みをしている事を解っていた。