チャーリーの家に着いたセツナは助手席から降りるとドアを閉める。
いつもならば玄関の明かりやら、リビングの窓から溢れる光があるはずなのが今日はそれが見えなかったことに小首を傾げていたときだ。

　「セツナ！悪いんだけどガレージのドアを閉めるのを任せても良い？私は家に誰か居ないか確認してくるね」

いつもと自宅の様子が違うことを感じ取っていたらしいチャーリーは運転席から降りると、セツナに向かってヒラヒラと手を振りながら家の中へと入っていく。
　残されたセツナがガレージのドアを閉める。
　シンッとした雰囲気で満ちたガレージの中に１人残されたセツナは心細さを感じ取った為、バンブルビーへと近づくと声を潜めながら話しかけた。

　「今日は疲れた？」

そっと運転席のドアを撫でながらセツナはバンブルビーに問う。
　問いかけへの返答はないが、それでも良いと思いながらセツナは笑うとそっと額をドアに押しつける。

　「お疲れ様、バンブルビー」

労いの言葉がバンブルビーに伝われば良いなと願いながらセツナが告げたときだ。
　度が開く音がした為慌ててセツナはバンブルビーから離れると、リビングに続くドアへと視線を向けるとそこにはチャーリーの姿があった。

　「誰か居た？」

　「書き置きがあった」

　「なんて書いてたの？」

　「ママはロンとデートだって。オーティスも空手の稽古だから今、家には誰も居ないからゆっくりできるよ？ビーがロボットになっても何の問題もなし！！」

何一つ障害がないことを喜ぶかのようにニッと笑ったチャーリーの言葉を聞いたのと同時にバンブルビーはロボットへと変形すると嬉しそうに全身を揺らす。
　バンブルビーの動きのせいで壁に掛けられている道具がガタガタと揺れるのを見たチャーリーが物言いたげに半眼になるのを見たセツナは、落ち着けと言うかのようにそっと彼女の肩を叩いて怒りを静めるように訴える。

　「・・・・まぁ今日は頑張ったし大目に見るかな？」

渋々怒りを収めたらしいチャーリーは今ひとつ納得してはいない、と言いたげな声音で呟いたのを最大の好機と見なしたセツナは焦ったような声で先程の発言を全力で肯定した。

　「そうそう！今日は頑張ったからね」

だから多少の行動は黙認してあげよう？
　そう言うかのようにセツナが告げればチャーリーは叶わないなぁと言うかのように肩をすくめると、思い出したと言うかのような顔をすると最初からこのガレージに置かれていたコルベットの元へと向かう。

　「チャーリー？」

　「ビーのラジオ壊れてたでしょ？コルベットのラジオで代用しようかなぁって思ってさ」

コルベットに着けてあるラジオを確認したチャーリーは型番が合っていることにホッとしたかのように微笑むと、ラジオを取り出すために工具を手に取る。
　それを見たセツナが手伝うために動こうとしたときだ。

　「セツナはビーの面倒を見ておいて。あの子、きっと何かやらかすだろうから」

　「あー・・・うん。そうだね。解った。手助けが必要だと思ったら声を掛けてね？」

　「解ってる。暇なら映画でも見ててよ？」

ガレージに備え付けてあるＴＶとビデオデッキにセツナは頷くとバンブルビーへと視線を向ける。

　「さて、と。チャーリーの仕事が終わるまでの間、ここで待っている事になるんだけど何か見たい映画とかある？・・・・そもそも映画って解るのかなぁ？」

小首を傾げて呟いたセツナと同じくバンブルビーも不思議そうに小首を傾げた。