まずは簡単な小手調べだと言うかのような口調でチャーリーはバンブルビーに向かい話しかける。

　「レッスンワン！私達以外の人の前ではビーはどうする？」

チャーリーの言葉にバンブルビーはすぐさま自分の身体を車へと変形させる。
　その反応にチャーリーは満足そうに笑い、セツナもコレはもしかするとそれほど手を焼かずに成果を得られるかもしれないと期待する。

　「オッケー！正解よ。解ってるじゃないの！！！」

喜びを隠さぬままチャーリーがバンブルビーを褒めれば、バンブルビーはすぐにロボットの状態になると頭のパーツをピコピコと動かす。

　「なら次はレッスンツーね！今度はちょっと難しいわよ？大丈夫？」

軽い口調と笑みを浮かべながら問われた言葉に対し、任せろ！と言うかのようにブンブンと首を縦に振ったバンブルビーはチャーリーが出す問題に対して今度も正解してやると言うかのように意気込んでいる。

　「あ！？誰か来た！！隠れなきゃ！！！」

そう言ったチャーリーはセツナの手を掴むと、近くの岩場へと隠れる。
　数秒程そうしていたチャーリーであったが、もう良いだろうと判断するとそっと岩場から顔を出す。
　きっと今度も正解しているはずだ。
　そう思っていた彼女の期待を裏切るかのような光景がそこには広がっており、チャーリーはムッとした顔をすると腰に手を当ててバンブルビーを厳しい目をして見つめる。

　「どうしたの？」

　「アレを見て」

信じられないと言うかのような口調でチャーリーは告げるとバンブルビーの居る場所を指さす。
　セツナがその場所を見ると、そこには顔だけを砂浜へと押し込んでいるバンブルビーの姿があった。

　「やっちゃったねぇ・・・・」

頭隠して尻隠さず、という諺を現すかのようなバンブルビーの姿にセツナもコレはフォローすることが出来ないと思いながら黙り込む。

　「ねぇちょっと、冗談でしょ？ふざけてるわけじゃないよね？」

先程とはまるで違うチャーリーの言葉にバンブルビーは砂浜から顔を出す。
　岩場の近くにいる２人の顔を見て、自分が間違えたのだと悟ったらしいバンブルビーは慌てて車になったのだが、全てが遅すぎた。
　ゆっくりと再びロボットの姿になると、チャーリーに向かい「ごめんなさい」と伝えるかのような音を鳴らしながら近づく。

　「解ってる。うん、間違えたっていいの。その為に練習するんだからね」

縋るように自分を見つめてくるバンブルビーの頬をチャーリーが優しく撫でる。

　「間違えが悪い事じゃないよ。ちゃんと答えを知って、正しい対処をすることを知るのが一番良いんだから・・・今日の経験がビーのためになるのなら、それが一番良いんだからさ」

大丈夫だと言うかのようにセツナもバンブルビーの頬を撫でると、２人から撫でられたバンブルビーが嬉しそうな音を鳴らす。
　ピコピコと動く頭部のパーツを見たチャーリーが呆れたような声で呟いた。

　「アンタって甘えっ子ねぇ」

チャーリーの言葉にバンブルビーは「そうです！」と言うかのようにブンブンと首を大きく上下に振った後、チャーリーとセツナを抱き上げるとグリグリと頭を押しつける。
　遠慮なく押しつけられる金属の感触にセツナは微かな痛みを感じ取り、止めろと言うかのようにバンブルビーの頭を軽く叩くがそんな事で止るような性格をバンブルビーはしていない。

　「ビーッ！ホント、痛いから止めてよ？」

流石に限界だと訴えるかのようにセツナが切羽詰まった声で告げると、バンブルビーはそれ以上頭を押しつけるのを止める。
　申し訳ないと言うかのようにセツナへとヒタリと向けられた青い目に向かい、セツナは苦笑を浮かべながら大丈夫だと伝えるかのように微笑むと、そっと目元に手を添えて優しくその部分を撫でた。