1話:手に入れたのは不思議な車でした
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「・・・もしかして私が帰るのが嫌?」
まさかね。
そう思って口にした言葉に対してバンブルビーはそうだと言うかのように大きく頷く。
青い目に微かに浮かぶ液体に気づいたセツナは困った子だと思うと、バンブルビーの頬に手を添えると幼子に言い聞かせるかのような口調で話しかける。
「私には帰る場所があるの。それはここじゃなくて、違う場所にあるから私は貴方とは一緒に居られないんだよ」
その言葉に対して返されたのは嫌だと訴えるかのような首振りだ。
「あのね、バンブルビー。貴方はチャーリーの車なのよ?」
少しばかり眦を釣り上げて強い口調で告げればバンブルビーは一瞬だけ怯えたように震えたが、なけなしの勇気を振り絞りながら嫌だと言うかのように再度首を振った。
「えぇ・・・ねぇ、チャーリー。どうしよう?」
困惑した顔を隠さずにセツナがチャーリーを見ると、そこには気持ちの良い笑みを浮かべている幼なじみの姿があった。
間違いではなければその手にはスパナが握られていてソレを見たセツナの顔から一気に血の気が引く。
「大丈夫よ。私に任せて」
そう告げるのと同時にチャーリーはセツナの上着を握っているバンブルビーの指へと向かいスパナを振り下ろす。
ガキンッという金属が衝突する音が響いた直後、バンブルビーが悲鳴にも似た電子音を鳴らしながらセツナの上着を掴んでいた手を離した。
「え?」
「安心して、セツナ。バンブルビーの・・・ううん。ビーの躾は今夜で終わらせておくから!!」
「えぇっと、そうじゃなくてさ」
「大丈夫!!言って聞かなかったら身体で解らせるから!!」
パシンッと自身の掌にスパナを叩付けたチャーリーに対しバンブルビーは怯えたように青い目を向けていたが、次に縋るようにセツナへと視線を向ける。
助けて。
そう訴えるかのような青い目に対してセツナは答えようかと思ったのだが、そもそもバンブルビーはチャーリーの車なのだから自分が口を出して良いことなのではないと判断する。
「お手柔らかにね?」
「勿論よッ!!!」
嬉々として返事をした幼なじみとは対照的にバンブルビーはこれ以上ないと言う程大きく目を開いて固まった。
その隙にセツナはワトソン家のガレージから出ると家に向かって歩いていたが、その足取りが不意に止る。
ゆっくりと振り返ればガレージの中で騒いでいる1人と一体の影が天井に映っていてソレを見たセツナは苦笑を浮かべると歩き出す。
「B-127か」
車の識別ナンバーにしては随分と妙な数字だと思いながらセツナは自宅の外壁を見つめながら呟く。
「父さんなら何か知っているかなぁ?」
事情は知らないがある特殊な場所で働いている父ならば何かしらの情報を持っているのかもしれない、そう判断したセツナは小走りで家に向かって走り出す。
ソレが後に自分の首を絞めることになるのだということを、この時のセツナは知るよしもしなかった。