チャーリーの運転する車で彼女の家に着く頃には日が傾いており、車庫へと車を入れた後は車内の掃除へと取りかかる。
　車内の土埃を一掃し、外装を洗い終える頃にはすっかり日が沈んでいた。
　微かに感じる倦怠感が心地よいなぁとセツナは思いながら、所々錆びてしまってはいるが綺麗になったビークルをジッと見つめる。
　鮮やかな黄色はまるでマルハナバチを連想させるかのような色をしていて、この辺ではあまり見かけないカラーリングだなぁと思っていたときだ。

　「セツナ、すごく遅くなっちゃったけど時間大丈夫？」

　「うん。母さんには今日はチャーリーの誕生日会をするから遅くなるって伝えてあるから問題はないよ」

　「なら良かった」

ホッと胸をなで下ろしたチャーリーへと向かいセツナは気にするなというかのように微笑みかけると、壁に掛けられている時計へと視線を向けた。
　時刻はそろそろ皆が寝静まるような時間帯へと変わりつつあり、これ以上このガレージで騒ぐのはチャーリーの家族に迷惑になると判断したセツナがチャーリーを見ると、同意見だったらしいチャーリーが頷く。

　「色々弄るのは明日にする」

流石に今日一日で全部を直しきれなかったらしいチャーリーの言葉にセツナは、あのボロ車を動かせるだけ修理できたのだから凄いなと思う。

　「送っていく？」

　「歩いて数軒先なんだから大丈夫だよ」

　「そっか。解った。また明日ね？」

　「うん。また明日」

ヒラリと手を振ったセツナはガレージの横にある出入り口から出て行こうとしたときだ。
　ガシャンッという聞き慣れぬ金属音がしたことに身動きを止める。
　チャーリーへと視線を向けると彼女も怪訝そうな顔をしていた。
　今の音の発生源はどこだ？そう思いながらガレージ内を見渡していると、ビークルの下に見慣れないモノが落ちていることにセツナは気づく。

　「アレ・・・なんだろうね？」

　「え？」

セツナの指摘にチャーリーは先程まで掃除していたビークルへと視線を向けると、ビークルの下に落ちているものを見つけた。
　恐る恐るビークルへと近づいたチャーリーは落ちていたものを見て眉をしかめると無言のまま、部屋の隅に置いてあるメカニッククリーパーを手に取ると車の側に置くのを見たセツナは、壁に掛けられている懐中電灯を手に取るとチャーリーに近づく。

　「はい、懐中電灯」

　「ありがとう」

スイッチを押して懐中電灯の明かりをつけたチャーリーはメカニッククリーパーを使って車の下へと潜り込む。
　その間もセツナは落ちている金属をジッと見つめていたとき、その金属がまるで腕のような形をしていることに気づいたときだ。

　「え・・・」

車の下から聞こえてきたチャーリーの驚愕した声にセツナは気づくのと同時に、彼女の足を掴み強引に車の下から引きずり出したときだ。
　金属のこすれ合う音と共に凄まじい勢いでビークルが形を変えていく。
　分解しつつも何かの形になるかのようにパーツとパーツが複雑に噛み合っていく姿をチャーリーとセツナは黙って見つめる事しか出来ない。
　最終的にビークルは二足歩行のロボットのような姿になる。
　無言のまま青い目でチャーリーとセツナを見つめ、そして2人もまた何も言わずにロボットを見つめる事しか出来なかった。