ある程度の報告書は軍を通して政府に報告されている。
　彼等の固有名も報告しているのだが、政府役人達はそれこそオプティマスのような重要人物以外の名を呼んだ事は無かった。
　金属生命達には心がないのだと言うかのように、ただの機械の塊だと言うかのように、彼等に対して酷い言葉を投げかける者達とていた。
　そんな者達とばかり接していたからかレノックスは最初からセツナに対して警戒心を持って接していたのだが、目の前にいるセツナの口から出た”ビー”という名前、それはある青年がある金属生命体を呼ぶときの愛称の一つだった。
　それ故にレノックスは驚き、ポカンと口を開けてセツナを凝視してしまう。

　「報告書を読む限りだとあの子は中々の悪戯っ子のようねぇ」

朗らかに微笑みながら告げられた発言。
　まるでバンブルビーの性格を見抜いているかのようなその発言にレノックスは思わず軍人としての立場を忘れて答えてしまう。

　「愛嬌がある分困ったものです」

　「でしょうねぇ」

　「都合が悪くなると嘘泣きをして誤魔化します」

　「あらあら・・・小狡くなったのねぇ」

楽しげに微笑みながらレノックスの言葉に同意したセツナの姿を見たレノックスは何が起こっているのか解らないという顔をして立ち尽くしていたが、そんなレノックスの脇腹を部下の１人がトンッと突いてきたため慌てて我を取り戻す。
　今になって自分は政府役人に対して随分と礼を欠いた態度で接していたことを理解するのと同時に、取り返しのつかない事になってしまうかもしれないと恐れを抱いた時だ。

　「貴方の態度や言動に関して私は何か言うつもりもありませんし、政府に関しても報告するつもりはありませんからご安心を・・・むしろそういった砕けた口調や態度の方が私もやりやすいわ」

先手を打たれたレノックスは困ったたというかのようにガリッと乱暴に頭を掻くと、その反応が面白かったセツナは楽しげに笑う。
　その反応は不快ではない、むしろ好ましいと言われた気がしたレノックスはもうどうにでもなれ！と思いながら素に近い口調でセツナに話しかける。

　「アイツ等の事をご存じなので？あ、いや・・・資料を政府に提出しているので、知っていて当然だということは解っているのですが、貴方の口調だとまるで報告している以上のことを知っているような気がしまして」

　「資料に書かれている事以外にも知っている事はあるわ」

　「あー・・・えぇっとですねぇ」

　「大丈夫よ。ソレは誰にも言うつもりはありませんから・・・メアリング長官には黙っておきます。だから・・・会わせては頂けないかしら？私はただ、会いたいだけなの」

朗らかに微笑んでいた笑みが今にも泣き出しそうなものへと変わる。
　何故そんな顔をするのかレノックスには解らない。
　けれどこの人の言葉に嘘はないのだと思えたレノックスは、彼等が居る場所へと案内することを決めた。

　「コレは俺達だけの内緒でお願いします」

　「えぇ。勿論！」

泣き出しそうだった顔が悪戯っ子のように輝いたのを見た瞬間、レノックスはこの役人とは仲良く出来そうだなぁと密かに感じ取っていた。