18章:たすけて
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体力が尽きるまで走り続けた若葉は気づけば見知らぬ大きな倉庫の前まで来ており、倉庫の壁に手をつきながら乱れた息を整えていた若葉であったが、呼吸が落ち着き始めるとその場に座りこめばドッと汗が出て衣服を濡らしていく。
「私・・・馬鹿だ」
顔を手で覆った若葉の目から涙が溢れ出す。
脳裏に焼き付いて離れないのは母の姿だ。
本当はあんなことを言うつもりなんてなかった。
本当はちゃんと話し合いをしたかった。
話せばきっと解り合えると思っていた。
母と話している間もずっとずっと離れなかったのは父の言葉だ。
母の返す言葉一つ一つが父の言っていた通りではないか、と若葉に訴えてきて父が言っていたことは正しいのだと言うかのように感じられた。
けれど冷静さを取り戻した今となれば、正しいからと言って人を傷つける言葉を口にして良いのだろうか?という疑問を抱くのと同時に、母に対して言った言葉は決して言ってはならない事だったのではないか?と思えた時だ。
「だけど私は寂しかったもの」
幼子の声が聞こえた為、恐る恐る目元を覆っていた手を離した若葉の目に見えたのは幼い頃の自分だった。
子どもらしからぬ冷静な目と無表情なまま立ち尽くしているかつての自分の姿。
それが幻である事くらい若葉はすぐに気づくが、幼き頃の自分は消えてはくれない。
「私は寂しかった」
だから若葉が母を責めるのは当然だと?
母が若葉から責められるのは当然だと?
そう思った若葉はそれは違うのだと言うかのように目をきつく閉じるとブンブンと頭を振り、幼き頃の自分の言葉を拒絶した。
幼い頃の自分の言葉を拒絶をしていながらも若葉はその言葉が事実である事を、ずっとずっと押し殺してきた自分自身の本音である事を解っていた。
解っているからこそ若葉は受け入れることを出来なかった。
母が若葉の事を蔑ろにしてでも必死に働いていたのは自分のためだ。
我が子が将来苦しまないようにするために、我が子が将来何かを選ぶときに困らないようするためだ。
母は若葉の寂しさに気づいていた。
けれどその寂しさを満たすことが自分達にとってどのような意味を持つのか解っていたからこそ、母はあえて見て見ぬふりをしたのだ。
そうしなければならなかったのだ。
「ごめんね。若葉」
夜遅くに職場から呼び出された母が寝たふりをしている若葉に対して、申し訳ないと言うかのような声で謝罪の言葉を口にしていた事は何度もあった。
その度に若葉はすぐにでも飛び起きて母に対して「行かないで!」と言いたかったのを必死で堪えた。
寂しい、一人は嫌だ。
幼い頃の自分はそれを最後まで口にすることが出来ず、ただ黙って布団を握りしめることしか出来なかった。
母は若葉が起きていたことに気づいていた。
解っていて、あえて辛い選択をしたのだ。
後にソレが自分の首を締め付けることだと解っていながら。
何故そうやっていつも自分を犠牲にする道ばかりを選ぶのだ?
そう思った若葉の耳元に誰かの足音が聞こえてくる。ゆっくりとした足取りで近づいてきたその人物は若葉の前で歩みを止める。
「こんな所で何をしている?」
聞こえた声はここに来てから一番聞いた声音だったことに若葉は気づく。
「私・・・馬鹿だ」
顔を手で覆った若葉の目から涙が溢れ出す。
脳裏に焼き付いて離れないのは母の姿だ。
本当はあんなことを言うつもりなんてなかった。
本当はちゃんと話し合いをしたかった。
話せばきっと解り合えると思っていた。
母と話している間もずっとずっと離れなかったのは父の言葉だ。
母の返す言葉一つ一つが父の言っていた通りではないか、と若葉に訴えてきて父が言っていたことは正しいのだと言うかのように感じられた。
けれど冷静さを取り戻した今となれば、正しいからと言って人を傷つける言葉を口にして良いのだろうか?という疑問を抱くのと同時に、母に対して言った言葉は決して言ってはならない事だったのではないか?と思えた時だ。
「だけど私は寂しかったもの」
幼子の声が聞こえた為、恐る恐る目元を覆っていた手を離した若葉の目に見えたのは幼い頃の自分だった。
子どもらしからぬ冷静な目と無表情なまま立ち尽くしているかつての自分の姿。
それが幻である事くらい若葉はすぐに気づくが、幼き頃の自分は消えてはくれない。
「私は寂しかった」
だから若葉が母を責めるのは当然だと?
母が若葉から責められるのは当然だと?
そう思った若葉はそれは違うのだと言うかのように目をきつく閉じるとブンブンと頭を振り、幼き頃の自分の言葉を拒絶した。
幼い頃の自分の言葉を拒絶をしていながらも若葉はその言葉が事実である事を、ずっとずっと押し殺してきた自分自身の本音である事を解っていた。
解っているからこそ若葉は受け入れることを出来なかった。
母が若葉の事を蔑ろにしてでも必死に働いていたのは自分のためだ。
我が子が将来苦しまないようにするために、我が子が将来何かを選ぶときに困らないようするためだ。
母は若葉の寂しさに気づいていた。
けれどその寂しさを満たすことが自分達にとってどのような意味を持つのか解っていたからこそ、母はあえて見て見ぬふりをしたのだ。
そうしなければならなかったのだ。
「ごめんね。若葉」
夜遅くに職場から呼び出された母が寝たふりをしている若葉に対して、申し訳ないと言うかのような声で謝罪の言葉を口にしていた事は何度もあった。
その度に若葉はすぐにでも飛び起きて母に対して「行かないで!」と言いたかったのを必死で堪えた。
寂しい、一人は嫌だ。
幼い頃の自分はそれを最後まで口にすることが出来ず、ただ黙って布団を握りしめることしか出来なかった。
母は若葉が起きていたことに気づいていた。
解っていて、あえて辛い選択をしたのだ。
後にソレが自分の首を締め付けることだと解っていながら。
何故そうやっていつも自分を犠牲にする道ばかりを選ぶのだ?
そう思った若葉の耳元に誰かの足音が聞こえてくる。ゆっくりとした足取りで近づいてきたその人物は若葉の前で歩みを止める。
「こんな所で何をしている?」
聞こえた声はここに来てから一番聞いた声音だったことに若葉は気づく。