16章:母の秘密
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父の元からどうやって母のいる病室近くまで来たのか若葉は覚えていない。
自分と世界とが薄い膜で隔離されてしまっているかのような奇妙な感覚に支配されながら、無表情のまま足を動かし続けていた。
「(母さん。なんで?)」
頭の中で繰り返されるのは父の言葉だ。
子どもを産む事は自分の命と引き替えになるのに教えてくれなかったのだろう?
それは私の事なんてどうでも良いと思ったから?
母を失った後の娘の気持ちや、頼る存在を喪った娘の事なんてどうでも良かった?
私の事なんて後回しにしても良いと思えたの?
ソレはあり得ないことだ、そう必死に言い聞かせながらも心の中でずっと今まで息を潜めてきた嫌な何かがざわめくのを若葉は感じ取った。
「大丈夫。大丈夫」
きっと今考えている馬鹿な考えは母に会えばきっと消えるはずだ。
縋るような気持ちで母の病室の前に辿り着いた若葉を待っていたのは、固く閉ざされた病室の扉だった。
扉には英語で何か書かれたプレートが貼り付けられており、その内容をなんとか理解しようと若葉はするが全く解らず途方に暮れていたときだ。
「若葉?」
聞き覚えのある声が背後からした為その方向へと勢いよく振り返った若葉の目が捉えたのはラチェットで、目が合ったラチェットは若葉の顔色が悪い事に気づくと顔には出さないが危機感を感じ取る。
いつもと同じ優しげな笑みを浮かべながらラチェットは若葉に近づきながら、メガトロンに対してすぐに博士の病室に来るようにとメッセージを一方的に送りつけた。
「博士に会いに来たのかな?」
「はい。あの・・・これは?」
扉に貼られているプレートを指さした若葉はまさか母の身に何かが起きたのではないか?という不安を隠すことなくラチェットへと問いかける。
「コレかい?これは”許可書を持った者以外立入禁止”と書いてあるんだよ」
博士の元夫であり若葉の実父である男がどういった目的出来たのかラチェットを含めた多くの者達は知っている。
レノックスを含めたごく一部の信頼の置ける軍人達も知っており、彼等と協力をしつつ博士と胎児を守る為にこのような手段をラチェットは用いたのだ。
けれど大人の考えを子どもに伝えることはできない。
ましてや警戒されているのが実の父親であると知った若葉がどのような感情を抱くのかなどラチェットには理解出来ていて、だからこそ言葉を濁して真実を隠した。
「なんでこんな事を?」
「今の博士にストレスは厳禁だからね」
ありきたりではあるが、それらしい理由を告げれば若葉は小さく首を動かす。
納得は出来ないが状況は理解した、というかのような若葉の対応にラチェットはこの話題を続ける事はあまり良くはないと判断する。
「君の許可書も作って老いたから渡しておこう」
白衣のポケットから一枚のカードを取り出したラチェットは若葉へとソレを渡す。
いつの間に撮ったのかは解らないがカードには若葉の顔写真が貼られており、本人以外は使う事が不可能だと思えるソレを若葉は紛失するようなことは出来ないな、と思いながら大切そうに両手で掴んでいたときだ。
「私も博士の様子を見に来たから一緒に入ろう」
ラチェットに促されるかのように若葉は病室へと足を踏み入れた。
「博士。診察に来た。それから可愛らしい面会者がお越しだよ」
ラチェットの声に母は入口に立っている若葉へと視線を向ける。
母は若葉の顔を見ると安心したと言うかのように目を細めて微笑みかけてきてくれた為、若葉もぎこちなく微笑みながら母の元へと向かおうとした。
自分と世界とが薄い膜で隔離されてしまっているかのような奇妙な感覚に支配されながら、無表情のまま足を動かし続けていた。
「(母さん。なんで?)」
頭の中で繰り返されるのは父の言葉だ。
子どもを産む事は自分の命と引き替えになるのに教えてくれなかったのだろう?
それは私の事なんてどうでも良いと思ったから?
母を失った後の娘の気持ちや、頼る存在を喪った娘の事なんてどうでも良かった?
私の事なんて後回しにしても良いと思えたの?
ソレはあり得ないことだ、そう必死に言い聞かせながらも心の中でずっと今まで息を潜めてきた嫌な何かがざわめくのを若葉は感じ取った。
「大丈夫。大丈夫」
きっと今考えている馬鹿な考えは母に会えばきっと消えるはずだ。
縋るような気持ちで母の病室の前に辿り着いた若葉を待っていたのは、固く閉ざされた病室の扉だった。
扉には英語で何か書かれたプレートが貼り付けられており、その内容をなんとか理解しようと若葉はするが全く解らず途方に暮れていたときだ。
「若葉?」
聞き覚えのある声が背後からした為その方向へと勢いよく振り返った若葉の目が捉えたのはラチェットで、目が合ったラチェットは若葉の顔色が悪い事に気づくと顔には出さないが危機感を感じ取る。
いつもと同じ優しげな笑みを浮かべながらラチェットは若葉に近づきながら、メガトロンに対してすぐに博士の病室に来るようにとメッセージを一方的に送りつけた。
「博士に会いに来たのかな?」
「はい。あの・・・これは?」
扉に貼られているプレートを指さした若葉はまさか母の身に何かが起きたのではないか?という不安を隠すことなくラチェットへと問いかける。
「コレかい?これは”許可書を持った者以外立入禁止”と書いてあるんだよ」
博士の元夫であり若葉の実父である男がどういった目的出来たのかラチェットを含めた多くの者達は知っている。
レノックスを含めたごく一部の信頼の置ける軍人達も知っており、彼等と協力をしつつ博士と胎児を守る為にこのような手段をラチェットは用いたのだ。
けれど大人の考えを子どもに伝えることはできない。
ましてや警戒されているのが実の父親であると知った若葉がどのような感情を抱くのかなどラチェットには理解出来ていて、だからこそ言葉を濁して真実を隠した。
「なんでこんな事を?」
「今の博士にストレスは厳禁だからね」
ありきたりではあるが、それらしい理由を告げれば若葉は小さく首を動かす。
納得は出来ないが状況は理解した、というかのような若葉の対応にラチェットはこの話題を続ける事はあまり良くはないと判断する。
「君の許可書も作って老いたから渡しておこう」
白衣のポケットから一枚のカードを取り出したラチェットは若葉へとソレを渡す。
いつの間に撮ったのかは解らないがカードには若葉の顔写真が貼られており、本人以外は使う事が不可能だと思えるソレを若葉は紛失するようなことは出来ないな、と思いながら大切そうに両手で掴んでいたときだ。
「私も博士の様子を見に来たから一緒に入ろう」
ラチェットに促されるかのように若葉は病室へと足を踏み入れた。
「博士。診察に来た。それから可愛らしい面会者がお越しだよ」
ラチェットの声に母は入口に立っている若葉へと視線を向ける。
母は若葉の顔を見ると安心したと言うかのように目を細めて微笑みかけてきてくれた為、若葉もぎこちなく微笑みながら母の元へと向かおうとした。