16章:母の秘密
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広い廊下の中で若葉は誰か来てくれないだろうか?と願うが神様とはとても残酷な存在らしく、若葉の願いなど叶えるつもりもないのか誰一人として姿を見せることはない。
「若葉。少し父さんと話さないか?」
「・・・・今じゃなきゃ駄目ですか?」
廊下に残る血痕。
誰かによってソレが消されてしまう前にサイドウェイズと会いたい若葉にとって父からの誘いに乗ることは今は出来ない。
今でなくとも可能な限り乗りたくはないと言うのが本心でもある。
「若葉。父さんがお前と話したいと言っているんだよ?ここでは行動が制限され、思うように自分の時間すら確保できないというのにその貴重な時間をお前のために使いたいと言っているんだが?」
提案事しているが実際にはそれは命令だ。
決して嫌とは言わせないかのような圧力を掛けながら父は朗らかに微笑みながら若葉に対して自分の意に沿うように強要する。
今になれば母がずっと父の存在を伏せていたことも、病室で再会した時に必死で逆らうなと言うかのように伝えてきたのも、意味があったことなのだと若葉には理解が出来た。
「でも・・・・」
「若葉」
少しばかり苛立ちを滲ませながら名を呼ばれた若葉は唇を噛みしめる。
父の機嫌を損ねてしまう事は得策では無いような気がしたのだ。
父は母を助けるためにここに来たと言うことはラチェットとの会話で何となく理解していて、ここで下手に父の不興を買ってラチェットや他の人達が動きづらくなってしまう事だけは阻止しなければならない。
母と胎児の体調が良くはないのならばこそ、自分にできる事ならばしなければならない。ソレが例えどれほど苦痛のことであろうとも。
そう思った若葉は廊下に落ちている血痕をジッと見つめた後、力無く目を閉じると静かに答えた。
「はい」
「良かった。お前は母さんと違って利口だな。流石は私の娘だ」
良い子だというかのように頭を撫でる手はとても優しくて温かい。
ずっとずっと望んでいたはずの手であるはずなのに、若葉には父の手がまるで冷たい金属のようなモノに感じられた。
父に連れられた先はこの基地で滞在中に与えられた研究室で、父の許可した者以外は近づけない場所である事に気づいた若葉は一瞬だけ中に入ることを躊躇ったが、ここまで来てしまった以上引き返すという選択肢は既に消えているため、ゆっくりと室内へと足を踏み入れる。
室内は窓を閉め切っているせいか少しばかり空気が淀んでいた。
「ここは長い間使われていなかったらしく、少しばかり空気が悪くてね。空気清浄機を用意して貰ったからすぐに電源を入れよう」
言うのと同時に父は部屋の隅に置かれていた空気清浄機の電源を入れる。
微かに聞こえてくるモーター音と淀んだ空気が吸い込まれフィルターを通り抜けた風が静内に響く。
「そこに座りなさい」
父から与えられた命令に対して若葉は無意識の内に従う。
それは若葉の中に流れる血がそうさせるのか、もしくは暴力を振われたことに対することなのか若葉にすら解らない。
若葉の向かいにある椅子に腰掛けた父は側にあった資料を手に持つと、書かれている内容を読みながら淡々とした声音で話しかけてくる。
「それにしてもお前の母親は本当に愚かだな」
「どういう意味ですか?」
意味を解りかねる、と言うかのような口調で若葉が問いかけると父は不思議そうな目をして若葉を見つめた。
「そのままの意味なのだが?金属生命体を愛し、そして異種族との間に子をもうけ、自らの命と引き替えに子を産もうとしているのだから」
淡々とした口調で言われた言葉。
それを若葉は信じられなかったが、実の父がそのような嘘をつくような人物には思えなかった。
「若葉。少し父さんと話さないか?」
「・・・・今じゃなきゃ駄目ですか?」
廊下に残る血痕。
誰かによってソレが消されてしまう前にサイドウェイズと会いたい若葉にとって父からの誘いに乗ることは今は出来ない。
今でなくとも可能な限り乗りたくはないと言うのが本心でもある。
「若葉。父さんがお前と話したいと言っているんだよ?ここでは行動が制限され、思うように自分の時間すら確保できないというのにその貴重な時間をお前のために使いたいと言っているんだが?」
提案事しているが実際にはそれは命令だ。
決して嫌とは言わせないかのような圧力を掛けながら父は朗らかに微笑みながら若葉に対して自分の意に沿うように強要する。
今になれば母がずっと父の存在を伏せていたことも、病室で再会した時に必死で逆らうなと言うかのように伝えてきたのも、意味があったことなのだと若葉には理解が出来た。
「でも・・・・」
「若葉」
少しばかり苛立ちを滲ませながら名を呼ばれた若葉は唇を噛みしめる。
父の機嫌を損ねてしまう事は得策では無いような気がしたのだ。
父は母を助けるためにここに来たと言うことはラチェットとの会話で何となく理解していて、ここで下手に父の不興を買ってラチェットや他の人達が動きづらくなってしまう事だけは阻止しなければならない。
母と胎児の体調が良くはないのならばこそ、自分にできる事ならばしなければならない。ソレが例えどれほど苦痛のことであろうとも。
そう思った若葉は廊下に落ちている血痕をジッと見つめた後、力無く目を閉じると静かに答えた。
「はい」
「良かった。お前は母さんと違って利口だな。流石は私の娘だ」
良い子だというかのように頭を撫でる手はとても優しくて温かい。
ずっとずっと望んでいたはずの手であるはずなのに、若葉には父の手がまるで冷たい金属のようなモノに感じられた。
父に連れられた先はこの基地で滞在中に与えられた研究室で、父の許可した者以外は近づけない場所である事に気づいた若葉は一瞬だけ中に入ることを躊躇ったが、ここまで来てしまった以上引き返すという選択肢は既に消えているため、ゆっくりと室内へと足を踏み入れる。
室内は窓を閉め切っているせいか少しばかり空気が淀んでいた。
「ここは長い間使われていなかったらしく、少しばかり空気が悪くてね。空気清浄機を用意して貰ったからすぐに電源を入れよう」
言うのと同時に父は部屋の隅に置かれていた空気清浄機の電源を入れる。
微かに聞こえてくるモーター音と淀んだ空気が吸い込まれフィルターを通り抜けた風が静内に響く。
「そこに座りなさい」
父から与えられた命令に対して若葉は無意識の内に従う。
それは若葉の中に流れる血がそうさせるのか、もしくは暴力を振われたことに対することなのか若葉にすら解らない。
若葉の向かいにある椅子に腰掛けた父は側にあった資料を手に持つと、書かれている内容を読みながら淡々とした声音で話しかけてくる。
「それにしてもお前の母親は本当に愚かだな」
「どういう意味ですか?」
意味を解りかねる、と言うかのような口調で若葉が問いかけると父は不思議そうな目をして若葉を見つめた。
「そのままの意味なのだが?金属生命体を愛し、そして異種族との間に子をもうけ、自らの命と引き替えに子を産もうとしているのだから」
淡々とした口調で言われた言葉。
それを若葉は信じられなかったが、実の父がそのような嘘をつくような人物には思えなかった。