15章:似ていて異なる
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「あの時の・・・車ですよね」
母の体調が悪くなりメガトロンがラチェットの元へと移動したときに乗っていた車だ。
あの時はホログラムだった為か背景がうっすらと見えていたが、今日はちゃんとした人間の姿をしている。
「・・・そうです。あの時の車です」
意外なことに青年はノリの良い返答をしてきた。
その事に若葉は驚いたように一瞬、目を見張るが何か言葉を言うことはしない。
今まで出会ってきた人達は皆、どこか生真面目そうな性格だったり、色々と常識が吹き飛んでいた人達ばかりだった。
そんな連中を比べるのも少しばかり、否、かなり失礼な事だと若葉は思いながら青年に対して深々と頭を下げる。
「色々とありがとうございました」
「いやいや。マジでそういうの止めて。感謝してるなら、俺に頭下げるのとかマジで止めて。誰かにこの現場を見られたら俺がヤバいから」
陰険な情報参謀辺りに見られればそれをネタに一生都合の良い手駒ように扱われるだろうし、若葉をドリラーの友達したいと企んでいる防衛参謀に知られればヤバい任務を押しつけられ、航空参謀の耳に入れば下らない彼の下克上に利用される可能性が高い。
「だって蹴ったりとかしちゃいましたし」
「平気だよ。あれくらい痛くもかゆくもない」
若葉が蹴った部分は少しだけへこんでいたが修復プログラムによって現在は無事に修復されており、傷なんて最初からなかったかのような状態になっている。
その言葉を聞いて下げていた頭を上げた若葉はホッとしたように目を和らげた。
「本当にありがとうございました。貴方が居てくれたから、私は凄く助かりました」
「そう?役に立ったのなら良かったよ。珍しく俺に与えられた任務でもあったからさ」
気にするなと言うかのように笑った青年はここに来てから初めてと言って良い程気さくな雰囲気をしていた。
もしかすると常識人かもしれない、そう淡い期待を抱いた若葉だったが、ここに来てから体験してきた事が若葉に対して見た目に騙されるな、と警告を出してくる。
「お名前を聞いても?」
「サイドウェイズ。アンタの事は知ってるよ、若葉」
色々と有名人だからな。
そう言ったサイドウェイズは少しばかり若葉に対して同情するかのような顔をした時だ。
医務室のドアが開いたかと思えば、中からサイドスワイプが現れる。
応急処置として巻いていたらしいタオルは外され、代わりに包帯が巻かれていたことに若葉はホッと胸をなで下ろしたときだ。
「サイドウェイズ?お前、ここで何して居るんだ?」
驚いたような声でサイドスワイプは問いかけるが、その問いに対してサイドウェイズは応えることはしなかった為、若葉はどうしたのだろうか?と思いながらサイドウェイズを見ると、彼は血の気を引かせた顔をして立ち尽くしていた。
「怪我したって訳じゃねぇよな?」
「今日は内勤だ」
「・・・今日だけじゃなくて、お前はいっつも内勤だろ?何が楽しくてデータ処理ばっかりしているんだよ?お前も戦士なら戦場に立つ気構えを見せろよ」
サイドスワイプの言葉はサイドウェイズへの助言をしているかのようなものであるが、その声に少しばかり険がある事に若葉は気づくと、もしかするとこの2人は仲が悪いのだろうか?と思いながら2人の顔を交互に見ていた時だ。
自分へと向けられる言葉に対し何かを堪えるかのようにサイドウェイズはキツく拳を握っているのだが、その手から赤黒い血がポタポタと落ちていることに気づいた若葉は慌ててサイドウェイズの手を両手で握りしめる。
「血が出てますよ?」
握りすぎた事により掌に爪が刺さりそこから出血していたことにサイドウェイズは気づいてなかったらしく、若葉が指摘して初めて気づいたらしく驚いたような声を上げながら自分の両手を見つめていた。