15章:似ていて異なる
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「スワイプ。そういった態度は良くないよ」
呆れたような声でジョルトは現れた青年の名前を呼ぶと、スワイプと呼ばれた青年はフンッと鼻を鳴らしたまま口を開く。
「・・・何でソイツが居るんだ?」
「ちょっと事情があってね。・・・若葉さん。コイツはサイドスワイプと言って僕の同僚です。戦闘民族出身なので深いことはあまり考えない、否、考えられない脳筋野郎なので口も態度も悪いんですけど、根は悪い奴じゃないので安心して下さい」
「お前それ褒めてんの?貶してんの?」
「さぁ?どっちだと思う?」
ジョルトは楽しそうに肩をすくめるだけで理由は答えなかった。
その対応が気に入らなかったらしいサイドスワイプは怪我をしている手で近くにある壁を殴りつける。
ガンッという耳障りな音に若葉は顔から表情を消してジョルトとサイドスワイプを交互に見ることしか出来なかった。
「だからさ、そうやってすぐ態度に出すのは良くないよ」
「うるせぇよ」
苦々しい声音でそう返答したサイドスワイプはチッと舌打ちをすると踵を返す。
医務室から出て行こうとするその姿に気づいた若葉は怪我をしたのに治療もせず、出て行こうとするサイドスワイプの後ろ姿を見るとギョッとした顔をして慌てて彼の背中に声を掛けた。
「待って下さい!!」
思っていたよりも大きな声が出てしまったことに若葉自身が一番驚いていた。
てっきり無視されるだろうなと思っていた若葉だったが、意外なことにサイドスワイプは歩みを止めると顔だけ動かして若葉の方へと青い目を向けてきた。
「・・・何だ?お前も文句でもあるのか?」
「いえ、そうではなくて」
妙に刺々しい口調、威嚇するかのようなサイドスワイプの声に若葉は萎縮してしまう。
いつもならば返せるはずの言葉が何一つとして出てこないのは、ジクジクと痛む右頬のせいだ。また下手なことを言って叩かれたらどうしよう?そう思いながら若葉は上着の胸元をギュッと握りしめた。
「言いたいことがあるなら言えよ」
ここに来てからずっと変わらない相変わらずの素っ気ない声であったサイドスワイプが微かに見せた譲歩の感情に若葉は、恐る恐るサイドスワイプへと視線を向ける。
負傷した、と言っていた右手にはタオルが乱暴に向かれておりそれに滲む赤い血に気づいた若葉はヒュッと息を吸い込む。
「・・・言いたいことがねぇなら俺はいくぞ」
このまま立ち去る、と言うかのようなサイドスワイプの言葉に若葉はそれは駄目だろうと思うと引きつったような声で自分の気持ちを告げた。
「治療を受けて下さい」
「・・・・・・はぁ?」
言われた意味が分からない。
そう言うかのように盛大に顔を歪ませたサイドスワイプに対し、若葉は意を決したかのような声で必死に自分の考えを彼に伝える。
「治療の間、私が不快なら出ていますから・・・だから怪我の治療をしてください」
タオルに滲む真っ赤な血。
白い部分が微かに残っており、元は真っ白だったはずのタオルを完全に変色させてしまうまで出血しているのだから、サイドスワイプが負った傷はきっと深いのだろうなと判断した若葉はジョルトの方へと視線を向ける。
「私、部屋の外で待ってます」
そう告げると若葉は逃げるように医務室を出るとサイドスワイプが出てこないようにするためにドアを閉めた。