14章:父親
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消毒薬の臭いで満ちている処置室の中で若葉はぼんやりとした目をしたまま大人しく椅子に座っていた。
「あの」
「なんですか?」
若葉から呼ばれたジョルトは動かしていた手を止め、若葉の方へと視線を向けてみると、そこには目から光を失っている若葉の姿があった。
「母は、大丈夫ですか?」
目の前で起きた出来事はきっと母を精神的に苦しめるだろうと若葉は思うと、誰か母の側に居るのだろうか?と思いながら声を掛ける。
「先生がメガトロンに連絡をしています。もう博士の病室に居るみたいですし、博士も落ち着いていますから大丈夫ですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
母の側にメガトロンが居る。
それを知った若葉は良かったと言うかのようにぎこちなく微笑むと胸をなで下ろした。
一つ、けれどとても重要な意味を持つ不安だったことが消えた為か冷静さを少し取り戻す事ができた若葉は先程出会った男の事を、父親の顔を思い出す。
「(少しだけ・・・期待していたのにな)」
ずっと父親の顔を知らずに育ってきた若葉は自分の父親がどんな人物なのだろうか?と思い描いたことが何度かあった。
自宅には写真は一枚もなく、幼い頃は何故だろうか?とずっと疑問を抱いていたのだが、それは幼くて無知な若葉にとっては少しばかり都合の良い事の一つでもあった。
写真がないため自分の父親の顔を好き勝手に想像できたからだ。
それだけではなく、性格や父としての在り方ですら自分好みの理想的な設定にした。
「(今になればすっごく馬鹿だよね)」
優しくて、少しだけ頑固で、それでいてどこか過保護な父親。
もしも父と出会えたら、という仮定の未来とて想像した事だってあった。
けれど現実とはとても残酷で若葉が思い描いていた父のイメージは一瞬で砕け散る。
「(母さんの性格を考えれば答えなんて解りきっていたのに)」
自分の夫であり娘の父親である男の写真を一枚も手元に置かないことの意味は一つしかなかった。
けれどそれを若葉は認めたくはなかったのだ。
離れていたとしてもきっと父は自分を愛していてくれるはずだ、という馬鹿な考えを捨てきれずにいた。
その結果がコレだ、と思いながら若葉は自分の右頬へとそっと手を触れると、叩かれてしまった右頬は微かな痛みと熱を放っており、先程の出来事が夢ではないのだと若葉に対して伝えてくる。
「びっくりしましたよね」
「・・・え?」
突然ジョルトから話しかけられた若葉は驚きながらジョルトを見ると、彼は困ったように眦を下げて笑っていた。
「いつもは冷静な博士が動揺してたので何かあるのかと思いましたか、まさか手を出すなんて思いませんでした。だって普通は人前であんな事をしないでしょう?」
申し訳ない、そう告げるとジョルトは若葉の右頬に湿布を貼る。
湿布特有の臭いに若葉が顔をしかめたとき、ピリッとした痛みが唇から走った為、若葉は思わず眉をしかめてしまう。
「唇も少し切れちゃっていますね。薬を塗っておきましょうか」
にこっと微笑むと薬品やらが収納されている戸棚へと向かい、中から軟膏を取り出すとそれを若葉の唇にそっと塗る。
ビリビリと痺れるような痛みに若葉は黙って耐えていると、痛みの波は少しずつ引いていく。
「あの」
「なんですか?」
若葉から呼ばれたジョルトは動かしていた手を止め、若葉の方へと視線を向けてみると、そこには目から光を失っている若葉の姿があった。
「母は、大丈夫ですか?」
目の前で起きた出来事はきっと母を精神的に苦しめるだろうと若葉は思うと、誰か母の側に居るのだろうか?と思いながら声を掛ける。
「先生がメガトロンに連絡をしています。もう博士の病室に居るみたいですし、博士も落ち着いていますから大丈夫ですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
母の側にメガトロンが居る。
それを知った若葉は良かったと言うかのようにぎこちなく微笑むと胸をなで下ろした。
一つ、けれどとても重要な意味を持つ不安だったことが消えた為か冷静さを少し取り戻す事ができた若葉は先程出会った男の事を、父親の顔を思い出す。
「(少しだけ・・・期待していたのにな)」
ずっと父親の顔を知らずに育ってきた若葉は自分の父親がどんな人物なのだろうか?と思い描いたことが何度かあった。
自宅には写真は一枚もなく、幼い頃は何故だろうか?とずっと疑問を抱いていたのだが、それは幼くて無知な若葉にとっては少しばかり都合の良い事の一つでもあった。
写真がないため自分の父親の顔を好き勝手に想像できたからだ。
それだけではなく、性格や父としての在り方ですら自分好みの理想的な設定にした。
「(今になればすっごく馬鹿だよね)」
優しくて、少しだけ頑固で、それでいてどこか過保護な父親。
もしも父と出会えたら、という仮定の未来とて想像した事だってあった。
けれど現実とはとても残酷で若葉が思い描いていた父のイメージは一瞬で砕け散る。
「(母さんの性格を考えれば答えなんて解りきっていたのに)」
自分の夫であり娘の父親である男の写真を一枚も手元に置かないことの意味は一つしかなかった。
けれどそれを若葉は認めたくはなかったのだ。
離れていたとしてもきっと父は自分を愛していてくれるはずだ、という馬鹿な考えを捨てきれずにいた。
その結果がコレだ、と思いながら若葉は自分の右頬へとそっと手を触れると、叩かれてしまった右頬は微かな痛みと熱を放っており、先程の出来事が夢ではないのだと若葉に対して伝えてくる。
「びっくりしましたよね」
「・・・え?」
突然ジョルトから話しかけられた若葉は驚きながらジョルトを見ると、彼は困ったように眦を下げて笑っていた。
「いつもは冷静な博士が動揺してたので何かあるのかと思いましたか、まさか手を出すなんて思いませんでした。だって普通は人前であんな事をしないでしょう?」
申し訳ない、そう告げるとジョルトは若葉の右頬に湿布を貼る。
湿布特有の臭いに若葉が顔をしかめたとき、ピリッとした痛みが唇から走った為、若葉は思わず眉をしかめてしまう。
「唇も少し切れちゃっていますね。薬を塗っておきましょうか」
にこっと微笑むと薬品やらが収納されている戸棚へと向かい、中から軟膏を取り出すとそれを若葉の唇にそっと塗る。
ビリビリと痺れるような痛みに若葉は黙って耐えていると、痛みの波は少しずつ引いていく。