アーシー達の話を頭の中で整理した結果、彼女達が怒っていたのはお風呂の使い方ではなく、自分が自殺しようとたことに対してだと若葉は理解すると、深々とため息を吐き出す。
　　その音を聞いた３人は恐る恐る顔を上げると若葉の様子を伺う。

　「さすがの私も余所様の家で自殺はしませんよ」

　「「「ですよねぇ」」」

若葉が怒っていない事に気づいた３人はホッとした顔をして胸をなで下ろしたのだが、これでこの話題は無事に終了したと思いながら肩の力を抜く。

　「アーシーさん」

　「何かしら？」

　「私の事を監視するように命じたのは誰ですか？」

　「メガトロンよ」

当たり前の事のように返された名前を聞いた瞬間、若葉は過保護もここまで来たら大したものだと思う。
　そもそも今メガトロンが優先しなければならないのは自分ではなく、妊娠している母だろうにと若葉は思うとこめかみをそっと抑える。
　その間のアーシー達の話は止る事はない。

　「貴方がお風呂に入ってすぐに通信が来たの。自分が若葉と一緒に居るときは対処できるから問題ないけど、自分が不在の時は心配だって言っていてね」

　「私達の知っているメガトロンとあまりにも違うからビックリしちゃったわ。異変があればすぐに駆けつけるから即座に報告しろって言っていたし」

　「そうそう！私なんてバスタブに沈んでる若葉を見た瞬間『若葉が命を絶とうとしてるからすぐ来て』って連絡しちゃったもの！！」

連絡、その単語を聞いた瞬間に若葉はその発言をしたエリータワンへと視線を向けると、エリータワンはどうしたのだ？と言うかのように小首を傾げた。

　「閣下に私が自殺しそうだって連絡したんですよね？」

　「えぇ。そうだけど？」

　「ソレが勘違いだったって連絡はしました？」

青ざめた顔をして若葉が問いかけるとエリータワンは全ての動きをピタリと止める。
　全員が全ての動きを止めていた時だ。
　乱暴にドアがノックされる音と、ドアの外でオプティマスの悲鳴のような声が聞こえてきた事にアーシー達の顔から血の気が引く。
　今更間違いでした。と送ったと所でメガトロンの怒りは消えることは無い、むしろ火に油を注ぐだけになる。
　そう判断した若葉は座っていたソファから立ち上がる。

　「若葉？」

　「閣下と話してきます。元々、私が勘違いされそうな事をしたのが原因ですし」

そう告げた若葉がドアへと近づき、ドアの鍵を解除するのと同時に乱暴にドアが開かれる。
　ドアの前に立っていたメガトロンはドアが開いたのと同時に室内に入ろうとしたのだが、目の前にいる若葉の姿を見るとパチパチと瞬きをして固まっていた。

　「閣下。これには少しばかり事情がありまして・・・アーシーさん達はちょっと焦ってしまってメッセージを」

全てを言い終わる前に若葉はメガトロンに抱きしめられる。
　目の前にいるのが偽物ではないか、本当に自分の知っている若葉なのか確認するかのようにギュッと抱きしめていたメガトロンだったが、自分の腕の中にいるのが本物なのだと悟るとゆっくりと手を離す。

　「お前は死のうとしたのではないのだな？」

　「はい。ちょっとした誤解です。誰が悪いというわけではありません。だからアーシーさん達を責める事はしないで下さい」

　「・・・・・それならば良い」

疲れたようにため息を吐き出したメガトロンを若葉は少し複雑な気持ちをして見つめていた。