若葉が全てを受け入れた、という訳ではないのだが当面の問題は解決したことにホッと胸をなで下ろしたメガトロンは金属の指先で若葉に触れる。
　傷つけないように細心の注意を払って触れた指先から伝わってくるのは弱々しい生命体の鼓動だ。
　なんとなくだがメガトロンは若葉が嘘を言っていたり、無理をしているわけではないのだと悟ると密かに排気をした。

　「閣下の部下はもしかして全員、人間からロボットになれるんですか？」
　
　『正確にはこちらの姿が本来の姿だ。人間になるのは仮の姿でしかない』

　「そうなんですか」

この基地に来てからずっと抱いていた見えない真実が今になって解き明かされていくことを若葉感じ取っていた。
　恐らく若葉が知らない事はたくさんあるのだろうが、メガトロンは答えられることに関しては口を開いてくれるつもりらしく若葉を赤い目でジッと見つめており、その視線に答えるかのように若葉はメガトロンを見返す。
　メガトロンの正体を知ってしまった以上、きっと何かしら新たな問題が生じ、その問題からは決して自分は逃れる事が出来ないのだという事も同時に理解をした

　「閣下」

　『なんだ？』

　「・・・私は閣下の事が知りたいです。いいえ、知らなきゃ駄目ですよね？」

ある種の確信を抱きながら若葉はメガトロンへと問いかける。
　知らなければ対処もできないし、何か起こったとしても対応することも出来ないまま終わってしまう。
　それは嫌だと若葉は思いながら告げればメガトロンが唸るような声を上げる。

　『・・・お前もアイツと同じ事を言うのだな』

血は争えない、そう言うかのように呟いたメガトロンは笑うと彼の姿が大きくぶれる。
　ゆっくりとロボットの姿から見慣れた人間の姿へと変ったメガトロンは、少しばかり途方に暮れたような顔をしていた。

　「俺のことを知れば、俺のやろうとしたことを知ったのならばお前は俺を軽蔑するぞ？」

　「どうでしょう？閣下が成そうとした事がどうしても閣下にとって理由があるが故の行動ならば致し方のないことだと思います。それが他人から見ても間違いだとしても、閣下の中では正義だったのでしょう？」

ここ数日の付き合いでしかないがメガトロンという人間と生活をして、彼がどんな人なのか理解している若葉が告げれば、メガトロンは唖然とした顔をした。
　それはほんの一瞬のことでメガトロンは若葉へと手を伸ばすと自分よりも小さな身体を引き寄せるとギュッと抱きしめる。

　「お前が、俺の娘で良かった」

その言葉を聞いて若葉は一瞬、息を忘れる程の衝撃を受けた。
　すぐさま落ち着きを取り戻した若葉はメガトロンの背中へと腕を回すと彼の上着を掴む。

　「（貴方が私の父になってくれて良かった、なんて言葉は言わない）」

赤くなっている頬を隠すかのように若葉は顔を押しつける。
　いつか、いつかの未来で、メガトロンにこの事を言おうと思いながら若葉は笑う。
　そんな未来が来たら良いな。
　皆が、家族揃って笑っていられる未来がいつかいきたら、その時は素直になって色々と話したいなと思いながら若葉が笑っていたときだ。

　「それで話し合いだがどこで行う？俺とお前がゆっくりと話しが出来る場所か・・・・」

めぼしい場所を探しているらしいメガトロンの言葉に若葉が答えるよりも早く、第三者の声がその場に響いた。

　「安心しろメガトロン！！私の部屋を提供しよう！！」

その声に若葉が視線を向けるとそこにはオプティマスの姿があった。
　彼はメガトロンと若葉のやり取りを見て満面の笑みを浮かべており、その清々しい笑みに若葉は何故か解らないがゾワリと悪寒を感じ取ってしまう。