2章:解らぬ事ばかりが増えていく
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母から再婚話を聞かされ、その相手に会うためにアメリカに行くことが決まったのは夏休みの一ヶ月前であった為、バイト先の店長に「夏休みの間は休みます」と告げれば案の定、良い顔をされず返答も濁されてしまい若葉は内心「無理かもなぁ」と思っていたのだが次の日、店長に会うと彼は満面の笑みを浮かべながら休みを了承してくれた。
笑っているのに何故か顔面蒼白で額には冷汗を浮かべている店長の姿は異様で、思わず若葉はやっぱり休みは不要だと言おうとしたのだが、その言葉を店長は鬼気迫る顔をして拒否した。
「変な店長だったなぁ。まぁおかげでアメリカに行けるんだけどね」
バイト先の許可を得た若葉は細々とした準備に追われ、気づけばあっという間に一ヶ月が経過していた。
母の再婚に関して気持ちの整理をつけたかった若葉だったが、一ヶ月で気持ちの整理などつけられるわけなど無く、何とも言えない気持ちになりながらカートを引きながら空港の中を歩いていた時だ。
「若葉ちゃん。今日は”そっち”じゃなくて”こっち”よ」
以前、飛行機に乗ったときの記憶を頼りに受付カウンターへと向かって歩いていた若葉だったが隣を歩いていた母から声をかけられた為、歩みを止めて母へと視線を向けると母はある方向を指さしていた。
母が示す先にあるのは明らかにVIPが使うような出入り口で、ドアの両脇にはガードマンらしき屈強な人物が立っている。
「え?えぇっと?あっちなの?」
母のように指をさすことはできなかった若葉はドアと母の顔を交互に見つめていると、母は至極当たり前のことのように一つ頷く。
「今回は色々と特例だから」
そう告げると母はその出入口へと向かっていく。
目的の場所へと向かう母の堂々たる足取りに若葉は置いて行かれないように慌てて小走りで追いかける。
ガードマンに対して英語で話しかけた母はカバンの中からある書類を取り出し、それをガードマンへと渡すと書かれている内容をじっと読んでいたガードマンが一つ頷きドアを開ける。
「さ、入りましょ?」
「いいの?何か他に必要なこととかないの?」
「あの書類で通れるようになっているから安心して」
迷うことなく中へと入っていった母に続いて若葉は緊張した面持ちと足取りで中へと入ると、ドア一枚越しにある世界はそれこそ住む世界が違うというかのような光景であった。
忙しなく左右に視線を動かす若葉とは対照的に母は落ち着き払っており、混乱と困惑を交互に繰り返している娘が落ち着くまで何も言わずにいてくれた。
「なんていうか・・・凄いね」
「えぇ。本当にねぇ。出発まで時間があるから少し座って休みましょう」
そう告げた母が休憩所まで歩いていく。
少し遅れて母に続く若葉はあることに気づいた。
「(休憩所の場所を知っている?)」
案内板でも見たのだろうか?そう思い視線を動かした若葉の目には特にそれらしい物は見つけられない。
けれど母は迷うこともなく、誰かに場所を聞くでもなく歩いている。
目的地など知っているというかのように。
そんな母の姿を見て若葉は母がここに来るのは初めてではないのだと悟った。
二人の間に和気藹々とした会話はなく、館内BGMと時折かすかに聞こえてくる誰かの声だけがすべての音だった。
「あら?」
何かに気づいたらしい母が突然声を出したかと思えばその歩みが不自然な場所で止まる。
笑っているのに何故か顔面蒼白で額には冷汗を浮かべている店長の姿は異様で、思わず若葉はやっぱり休みは不要だと言おうとしたのだが、その言葉を店長は鬼気迫る顔をして拒否した。
「変な店長だったなぁ。まぁおかげでアメリカに行けるんだけどね」
バイト先の許可を得た若葉は細々とした準備に追われ、気づけばあっという間に一ヶ月が経過していた。
母の再婚に関して気持ちの整理をつけたかった若葉だったが、一ヶ月で気持ちの整理などつけられるわけなど無く、何とも言えない気持ちになりながらカートを引きながら空港の中を歩いていた時だ。
「若葉ちゃん。今日は”そっち”じゃなくて”こっち”よ」
以前、飛行機に乗ったときの記憶を頼りに受付カウンターへと向かって歩いていた若葉だったが隣を歩いていた母から声をかけられた為、歩みを止めて母へと視線を向けると母はある方向を指さしていた。
母が示す先にあるのは明らかにVIPが使うような出入り口で、ドアの両脇にはガードマンらしき屈強な人物が立っている。
「え?えぇっと?あっちなの?」
母のように指をさすことはできなかった若葉はドアと母の顔を交互に見つめていると、母は至極当たり前のことのように一つ頷く。
「今回は色々と特例だから」
そう告げると母はその出入口へと向かっていく。
目的の場所へと向かう母の堂々たる足取りに若葉は置いて行かれないように慌てて小走りで追いかける。
ガードマンに対して英語で話しかけた母はカバンの中からある書類を取り出し、それをガードマンへと渡すと書かれている内容をじっと読んでいたガードマンが一つ頷きドアを開ける。
「さ、入りましょ?」
「いいの?何か他に必要なこととかないの?」
「あの書類で通れるようになっているから安心して」
迷うことなく中へと入っていった母に続いて若葉は緊張した面持ちと足取りで中へと入ると、ドア一枚越しにある世界はそれこそ住む世界が違うというかのような光景であった。
忙しなく左右に視線を動かす若葉とは対照的に母は落ち着き払っており、混乱と困惑を交互に繰り返している娘が落ち着くまで何も言わずにいてくれた。
「なんていうか・・・凄いね」
「えぇ。本当にねぇ。出発まで時間があるから少し座って休みましょう」
そう告げた母が休憩所まで歩いていく。
少し遅れて母に続く若葉はあることに気づいた。
「(休憩所の場所を知っている?)」
案内板でも見たのだろうか?そう思い視線を動かした若葉の目には特にそれらしい物は見つけられない。
けれど母は迷うこともなく、誰かに場所を聞くでもなく歩いている。
目的地など知っているというかのように。
そんな母の姿を見て若葉は母がここに来るのは初めてではないのだと悟った。
二人の間に和気藹々とした会話はなく、館内BGMと時折かすかに聞こえてくる誰かの声だけがすべての音だった。
「あら?」
何かに気づいたらしい母が突然声を出したかと思えばその歩みが不自然な場所で止まる。