この家のリビングが広いことは若葉は知っている。
　それは母とメガトロンが二人で暮しているこの家に若葉が来たとしても狭さを感じない程だったからだ。
　きっと新しい家族が増えたとしても、それこそ赤ちゃんグッズなどが置かれたとしてもそれほど狭いとか、窮屈さとかを感じないだろうなぁと若葉は思っていた。

　「（ちょっと考えが甘かったかなぁ？）」

肌触りの良いクッションを抱きしめながら若葉は部屋の中を見渡す。
　この部屋には現在、若葉を含めて６人の人間が居る為か少しばかり室内が狭く感じられた。
　若葉の右隣にはメガトロンが座っている。
　座ったまま不機嫌そうな顔をして踵を踏み鳴らしており、機嫌が悪いことを無言のまま周りに訴えているメガトロンの前に正座をして座っているのはオプティマスだ。

　「本当に悪い事をしたと思っている。心から反省をしている」

　「貴様がそれを口にするのは何度目だ？」

　「今回ばかりは本当だッ！！信じてくれ！！！」

オプティマスはそう告げると自分の事を信用してくれるだろう者を探すため、辺りの様子を窺うがこの場に居る者達は冷めた目をして彼を見る。
　その様子からオプティマスがこうしたことをするのは初めてではないのだなぁと思いながら若葉がオプティマスを見つめていた。
　初対面の時に感じたのは物腰が穏やかで知的な雰囲気を持つ尊敬できる人、というのがオプティマスのイメージだったのだが、実際の彼のやった行動がどうしても結びつかなかった若葉がオプティマスを凝視していると、若葉が自分を見ている事に気づくとオプティマスが青い目を向けてくる。
　その顔がまるで助けて、と訴えているかのように若葉には感じられたがそれに答えるよりも早くメガトロンが若葉の頭を掴むと左の方へと顔を背けた。

　「メガトロン。それでは首が痛いと思うぞ」

静かな声でそう告げたのは若葉の左隣に座っている男だ。
　ショックウェーブと名乗った男はメガトロンの部下らしく、オプティマスを回収するために来てくれたらしい。
　メガトロンと同じくらいの身長がある為か存在主張がなかなか凄く、ここに来てから表情一つ変えない男に対して若葉が警戒する中、彼はにこりとも笑うことをしないまま若葉の頭を何度か撫でてくれた。
　その手つきが意外なくらい優しい事に若葉は驚いたのは秘密だ。

　「すまんな、メガトロン。オプティマスがまたやらかしてしまったようで・・・」

心底申し訳ないと言うかのような口調で話しかけてきたのは黒髪に隻眼の青い目をした男だ。歴戦の猛者のような雰囲気をしており、その眼光の鋭さから若葉は彼の事を直視すること出来ずにいる。

　「アイアンハイド。この馬鹿にしっかり言い聞かせておけ」

　「あぁ。ジャズとラチェットを交えてじっくり言い聞かせておく」

コクリと頷きながら言われた言葉にオプティマスが声にならない声で悲鳴を上げるが、この場に居る者達は誰一人としてフォローをすることはしない。
　アイアンハイドとショックウェーブと一緒にこの家にやって来たのはレノックスで、彼は疲れたような顔をして何とも言えない眼差しでオプティマスを見つめているだけだ。

　「メガトロン、お前達は今夜はどこで休むつもりだ？」

肝心の事を口にしたアイアンハイドはメガトロンへと向けていた視線を逸らす。彼が見た場所に居るのは若葉だ。
　メガトロン一人くらいならば彼の執務室で休む事が出来たのだろうが、若葉が一緒となるとそうは言えない。

　「・・・・！！・・・・・・・？」

　「却下だ。貴様等の仮眠室とて第三者が容易く入れるだろうが」

　「・・・・」

名案が浮かんだと言うかのような顔をしてレノックスがこの場に居る者達に何かを提案したらしいが、それに関してメガトロンは論外だと言うかのような口調で却下するとショックウェーブが無言のままコクコクと頷く。

　「やっぱり私の部屋で映画かゲームを」

　「「「黙っていろ」」」

オプティマスがその不安を払拭するかのように声を上げたが、それに対してメガトロン、ショックウェーブ、アイアンハイドの３名による容赦ない声が投げつけられた。