8章:未来に対する選択
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「一つ聞く。お前は自分の置かれている立場を理解しているのか?」
何の前触れもなく話題が変わったことに若葉はメガトロンが気を遣ってくれたのだと理解すると、この人は本当に不器用な人だと思いながら一つ頷く。
「・・・・なんとなくですけど認識はしていますよ」
母が軍事施設で博士と呼ばれる立場で働いていて、その結婚相手であるメガトロンは命令を下せるような重要な立場もしくは地位にいる。
それはここに来るまでの事で解っていた。
他国への滞在に必須であるパスポートを不要にさせる事、迎えに大佐クラスの軍人を派遣する事、場違いだと思えるような移動手段から周りの人達が二人の存在がこの軍事施設において重要な人物である事くらい若葉にだって理解出来ていた。
今まで隠していた事を教えると言う事、それがどのような意味を持っているのか解らぬほど若葉は愚かでもなかったし、子どもでもなかった。
きっと母はここに連れてくることが決まった時点で母が今まで隠してきたことを教えるつもりだったのだろうなと若葉は理解していた。
「(私がここの秘密を知った時点でもう今までのように過ごせない)」
自らの主張だけが通ることはなくなってしまう事を若葉は何となくだが感じ取っていた。
メガトロンの様子を伺えば彼はその顔に何の感情も浮かべてはいないが、何かを堪えるかのようにきつく握られている拳が彼の心境を無言のまま伝えてくる。
「これからきっと私の行動に関して制限ができるんですよね?」
「そうだ」
若葉の言葉に対して何一つ偽る事なく返された言葉、それはある意味でメガトロンの自分に対する誠意なのだろうなぁと若葉は認識する。
それと同時にきっとこれからメガトロンの口から出てくるのは若葉の未来にとってあまり良くはない展開である事も解っていた。
「お前には日本ではなくアメリカで生活をして欲しい」
重要人物の娘が他国に住んでいるともなれば守る事も難しい。
護衛を派遣する為にも細かな手続きをいくつも行わなければならないし、日本ではアメリカのように迎撃用の武器を所有するのにも色々と難しく、一言で言うのならば『面倒くさい』のだ。
一度に全てを守り、そして最小限に手続きを済ませるのならば、それこそ若葉がアメリカに来るのが一番良い。
けれどそれは大人達や周りの者達の考えでしかない。
若葉の意思は何一つとして配慮されてはいないのだ。
「だがそれは俺や周りの意思であり、お前の意思ではない」
まるで選択肢は他にあると言うかのようなメガトロンの言動に若葉は一瞬、頭の中が真っ白になったが、すぐにその意味を理解すると今にも泣き出しそうな顔をする。
「それは・・・どういう意味でしょうか?」
「・・・アイツとお前の事に関して少しだけ話した事がある」
「母さんとですか?」
「あぁ。本当ならばお前が高校を卒業するタイミングでこちらに来て貰う予定だった。今回は色々と事情がありこの島に来て貰ったが、本来はある街を拠点としている。故に生活に関しては不便を感じないはずだろうと思っていた。そこで三人で暮し、ゆっくりではあるが家族になれればと考えていたのだが・・・」
予定外の事が起きてしまった。
それは母の妊娠だ。
今日の母の様子から日本に帰国する事は危険だろうなと若葉は感じ取っている。
ここにはラチェットや他にも医療関係者が居るだろうから恐らく母はこのままここで出産するだろう。
「正直な話。俺には敵が多い」
でしょうね。
若葉はそう言いたかったが必死にその言葉を押し殺すと続きを促すかのようにジッとメガトロンを見ると、メガトロンは何とも言えない顔をしながらガリガリと自身の頭を乱暴に掻いた。