8章:未来に対する選択
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メガトロンと若葉の話し合いはそれこそ日付が変わるまで続く事となった。
いつもの若葉ならば長々と続く話し合いに早々と白旗をあげるのだろうが、今回ばかりはそれをしては駄目だと感じ取っていた。
きっとここでメガトロンの言い分を受け入れれば自分の学生生活はガラリと変わってしまう。
それだけは何としてでも阻止しなければ、そう思って必死にメガトロンと話し合いを続けた結果、今の生活とさほど変わらない状態を守る事ができた。
「・・・バイトとやらは辞めるつもりはないのか?」
「ありません」
ぐったりとした顔をしてソファの背もたれにしがみつきながら若葉は答える。
「アイツの収入は良い方だろう?生活に困窮しているとは思えないが?」
「そうですね。母はやりたい事とかやらせてくれましたから、お金の面では苦労したことはありませんでした」
習字教室やスポーツ教室のような習い事、そして受験前には塾に行きたいと言えば二つ返事で母は了承してくれたのだ。
何かをする度にお金や道具や、それこそ遅くなったときのお迎えなどがあったが母は嫌な顔一つしないで若葉の意思を尊重してくれた。
「遊ぶ金が欲しいのならば俺から渡すぞ?」
「そういうお金が欲しくてバイトをしているんじゃないんです」
「ならば何故だ?」
何故?その言葉を聞いた瞬間、若葉はすぐに言葉を返す事はできず、曖昧な笑みを浮かべる事しか出来なかった。
「あの人、お前のために昇進を断ったそうだぜ?」
脳裏に蘇ってきたのは母の同僚の男だ。
時々、家に来て一緒に食事をする事もあった男は若葉に対しても優しかった。
けれどその優しさの裏に巧妙に隠された”モノ”は当時の若葉にとって、ただただ不快なモノでしかなく、そして決して受け入れてはいけないモノでもあった。
ある種の畏怖すべき、拒絶すべきモノであった。
少しでも隙を見せてしまえば取り返しのつかない事になるかのような”ソレ”それはもしかしたら思い過ごしだったのかもしれないが、若葉はその感情を表には出さなかった。
けれど母は娘が男に対してどのような感情を抱いているのかすぐに悟ると、それ以降は男を家へと連れてくることもなく、若葉と会わせるような事はしなかった。
男と会わなくなったことを密かに安堵していた若葉だったが、何の前触れもなく現れた男は最後に見たときと比べて酷く窶れていて、以前のような凜々しさと若々しさは欠片もなかった。
「私のせい?」
「あぁ。そうだよ。娘の事を一番に考えたいからって事で断ったんだよ。女性初の役職者になれたかもしれねぇのに馬鹿な女だよなぁ。それにあの人が断ったせいで女性への昇進話が殆ど消えちまって、あの人を恨んでいる女性社員が沢山居る・・・・それに、俺との付き合いも終りにするって言われたよ。全部お前のせいだって自覚あるの?」
恨みの籠もった目をして同僚が告げた言葉には純粋な悪意と嫌悪だけが宿っていた。
自分のせいで母は将来を捨てた。否、捨てさせてしまった。
理解をするのと同時に若葉は自らがどう動くべきなのか理解をしたのだ。
一日でも早く母のために自立している娘になりたかったのだ。
学校に通って、バイトをする自分の姿を若葉は母に見せて安心して欲しかった。
そして母が娘の事を気にせずに仕事や好きな事をしてくれればと思ったのだ。
「どうした?気分でも悪いのか?」
黙り込んだきりピクリとも動かなくなってしまった若葉に対しメガトロンが心配そうな小湾で問いかけてきた為、若葉は慌てて過去の記憶から意識を切替える。
「ちょっと色々と考えていただけなので」
にっこりと微笑んだ若葉だったが、その笑みが貼り付けたかのような歪なものである事にメガトロンは気づいたがそれに触れる事はしない。
指摘してしまえば、気づかせてしまえば、きっと若葉に対して良い影響を与えないと判断したからだ。
いつもの若葉ならば長々と続く話し合いに早々と白旗をあげるのだろうが、今回ばかりはそれをしては駄目だと感じ取っていた。
きっとここでメガトロンの言い分を受け入れれば自分の学生生活はガラリと変わってしまう。
それだけは何としてでも阻止しなければ、そう思って必死にメガトロンと話し合いを続けた結果、今の生活とさほど変わらない状態を守る事ができた。
「・・・バイトとやらは辞めるつもりはないのか?」
「ありません」
ぐったりとした顔をしてソファの背もたれにしがみつきながら若葉は答える。
「アイツの収入は良い方だろう?生活に困窮しているとは思えないが?」
「そうですね。母はやりたい事とかやらせてくれましたから、お金の面では苦労したことはありませんでした」
習字教室やスポーツ教室のような習い事、そして受験前には塾に行きたいと言えば二つ返事で母は了承してくれたのだ。
何かをする度にお金や道具や、それこそ遅くなったときのお迎えなどがあったが母は嫌な顔一つしないで若葉の意思を尊重してくれた。
「遊ぶ金が欲しいのならば俺から渡すぞ?」
「そういうお金が欲しくてバイトをしているんじゃないんです」
「ならば何故だ?」
何故?その言葉を聞いた瞬間、若葉はすぐに言葉を返す事はできず、曖昧な笑みを浮かべる事しか出来なかった。
「あの人、お前のために昇進を断ったそうだぜ?」
脳裏に蘇ってきたのは母の同僚の男だ。
時々、家に来て一緒に食事をする事もあった男は若葉に対しても優しかった。
けれどその優しさの裏に巧妙に隠された”モノ”は当時の若葉にとって、ただただ不快なモノでしかなく、そして決して受け入れてはいけないモノでもあった。
ある種の畏怖すべき、拒絶すべきモノであった。
少しでも隙を見せてしまえば取り返しのつかない事になるかのような”ソレ”それはもしかしたら思い過ごしだったのかもしれないが、若葉はその感情を表には出さなかった。
けれど母は娘が男に対してどのような感情を抱いているのかすぐに悟ると、それ以降は男を家へと連れてくることもなく、若葉と会わせるような事はしなかった。
男と会わなくなったことを密かに安堵していた若葉だったが、何の前触れもなく現れた男は最後に見たときと比べて酷く窶れていて、以前のような凜々しさと若々しさは欠片もなかった。
「私のせい?」
「あぁ。そうだよ。娘の事を一番に考えたいからって事で断ったんだよ。女性初の役職者になれたかもしれねぇのに馬鹿な女だよなぁ。それにあの人が断ったせいで女性への昇進話が殆ど消えちまって、あの人を恨んでいる女性社員が沢山居る・・・・それに、俺との付き合いも終りにするって言われたよ。全部お前のせいだって自覚あるの?」
恨みの籠もった目をして同僚が告げた言葉には純粋な悪意と嫌悪だけが宿っていた。
自分のせいで母は将来を捨てた。否、捨てさせてしまった。
理解をするのと同時に若葉は自らがどう動くべきなのか理解をしたのだ。
一日でも早く母のために自立している娘になりたかったのだ。
学校に通って、バイトをする自分の姿を若葉は母に見せて安心して欲しかった。
そして母が娘の事を気にせずに仕事や好きな事をしてくれればと思ったのだ。
「どうした?気分でも悪いのか?」
黙り込んだきりピクリとも動かなくなってしまった若葉に対しメガトロンが心配そうな小湾で問いかけてきた為、若葉は慌てて過去の記憶から意識を切替える。
「ちょっと色々と考えていただけなので」
にっこりと微笑んだ若葉だったが、その笑みが貼り付けたかのような歪なものである事にメガトロンは気づいたがそれに触れる事はしない。
指摘してしまえば、気づかせてしまえば、きっと若葉に対して良い影響を与えないと判断したからだ。